あなただから。【青】

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"私、プロポーズされたの"





照れながら、幸せそうに自分の掌を空に掲げるAはほんっとうに可愛いよ。





頭おかしくなるくらい、かわいい。



なのに、どうしてこんなに胸が痛むの。








あの時自分が彼女に発言権を先に与えなかったら。







僕は、多分君のそんな事情知らずに告白していたんだと思う。









無駄に出した勇気が、裏目に出るところだった。









気づいたら、泣けてきて。



"最後まで神様は僕を救ってくれなかったな"




なんて、別に神なんて信じてないくせにそれらしいことを思ってみた。





神様も大変だよね。


都合のいい時にだけ呼び出されて大した努力もしないくせに神頼み。

滅茶苦茶な頼み事されてさ。






僕が神様だったら、投げ出してしまうだろうに。

そんな神のような存在からは程遠い僕は1人そう思う。








僕が神から見放されるのは当然だ。

Aみたいに、素直にひたむきな人間が救われるべきだ。







『泣いてくれるほどころんが喜んでくれるなんて思わなかった』





君はそう言って優しく僕の瞳から流れる涙をそっと拭った。





ごめん。喜んでない。祝福なんて、一切してない。





Aを自分の彼女に出来なかったことを、悔やんでいる。









Aの指輪が僕の涙で濡れて光った。



…僕じゃない男があげた最高峰のプレゼントを、涙が濁った感情の具現化として汚していく。






僕にはあげられなかった、プレゼント。






僕じゃ、ダメだった。






遥か昔、彼女と喧嘩をした日にここで1人隠れて花かんむりをつくってプレゼントした記憶がふと蘇ってきた。






君が、ここでバレンタインに恐らく友チョコであろうものを渡してきたことをふと思い出した。





…あぁ。




こうやって、今日の記憶もずっと胸のどこかには残るのだろうか。




この雨の香りも、君の火照った表情も、頭を撫でられた時の硬い指輪の触感も、全部全部全部。







な ん て 毒 々 し い の だ ろ う か





いっそのことこの記憶にずっと苦しみ続けたい。









『ころんもちゃんと幸せになってね』




いつの間に泣いていたのか、涙でメイクした顔がぐっしょりとしたAがそう言った。




ころんなら、いい人絶対見つかるよ。







そんな優しい言葉を上手く受け止められないのは
僕をセンチメンタルな気分にさせたのが





"あなただから"

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