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二年と同じく、一年も三人だけという恐ろしく少ない人数。
入学当初は男二人女一人という環境に気まずさを感じていたようだが、灰原の持ち前の明るさもあり、一週間もすればだいぶ距離が縮まったようだった。
まさにその噂の種である2年生が自分達の元にやって来ているとは露知らず、三人は穏やかな時間を過ごしていた。
「二年生には御三家の一人、五条家の方がいるのでしょう。⋯面倒な人でなければいいんですが」
「でも、とても頼りになりそうだよね!」
「⋯⋯どうでしょう」
灰原の果てしないポジティブ思考。まだ一週間しか経ってないというのに、見たことも話したことも無い先輩のことを純粋に尊敬しているように見える。
これはこれから先苦労するな⋯と、七海は小さく溜息を零した。
「──⋯⋯ん、」
「あ、」
一瞬風が強まり、窓を揺らした。その音に反応したのか、ずっと寝ていた一人──雅Aが目を覚ました。
フードのせいで鼻より上が隠れ、表情は分からないが、目元を軽く指で擦り、「⋯ぅん"」と伸びをした。
それにいち早く気づいたのは灰原で、「おはよう!!」と七海の右耳を貫いてAの元へ挨拶が届いた。
「灰原うるさい」
「ごめん七海!」
「⋯あー、おはよ。ごめん、寝てた」
「授業はまだなので問題ありません。おはよう」
腕を伸ばした時、パキ、と骨の音が聞こえたことは無視し、Aはそのまま灰原の後ろ──教室の扉をじっと見つめた。
「?⋯雅、どうかした?」
「いや⋯⋯、」
扉の先、廊下の奥の方からこちらへ歩いてくる呪力が“視えた”Aは、立ち上がり扉の方へと歩き出した。
普段視える呪力とは違う大きさと強さ。
いつもこの時間に先生が来ることは無いため、他の人だということは容易に想像出来た。
が、Aは先程まで寝ていたため、こちらに向かってくるのが先輩だ、という選択肢が頭から抜けていた。
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レモネード - いいですね! (5月28日 13時) (レス) @page8 id: abd64666f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2022年9月22日 19時