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ローside
「後はまぁ⋯⋯お祓い、ですかね」
そう言って気まずそうに目線を逸らした女。なぜ怪我をした状態で海のど真ん中に沈んでいたのか定かではないが、申し訳なさそうにこちらをみる赤い瞳には「これ以上聞かないでくれ」と言いたそうに不安げに揺れていた。
仕方なく先の質問は諦め、女の体調が全快した後のことを考えようとした。
──────ここに置いてくれ。その言葉に思わず目を見開いた。
聞けば、家事もできるし、戦闘でも足は引っ張らないと堂々と言い張った。その後に気まずそうに付け足した「お祓い」と言う単語。思わず思い切り顔を顰めてしまったのは少し申し訳ないと思う。
『⋯⋯どういうことだ』
「まぁ⋯簡潔に言うと、私、霊とかの類が視えるタイプで。それを祓えますよ、っていう⋯」
『前者二つは良いとして、そのお祓いとやらが何の役に立つ?』
「⋯⋯」
何の役に立つのか尋ねたところ少し考え込んだ女───Aとか言ったか───は、ぱっと顔を上げ言った。
「──頭や首、肩回り、⋯時には全身に纏わりつくような怠さ」
『───!!』
「寝て覚めても休んだ気がせず、寧ろ逆に気疲れするような⋯休んだ気がしない感覚。⋯身に覚えは?」
『⋯⋯⋯ある』
嫌にはっきり耳に入ってきた彼女の声。
その全てがここ最近の自身の体調を表すものと一致していた。いや、自分だけではない。船員たちも何人か最近寝ても疲れが取れた気がしない、だとか色々訴えていた気がする。
ほぼ無意識的にある、と返事をした俺は、続けて尋ねた。
『それは、単純に管理不足だからとかじゃないのか』
「⋯その場合もあるかもしれないですけど、手当てとかしてもらってるの見てればわかりますが、医者の貴方ならそれとは違うって気づいているのでは⋯?」
⋯それも、図星だった。自分の目で見ていないことを信じるのは難しくて、しかもそんな、非現実的な話。
何も言わず頷けば、それを合図にまた話し始めた。
「その、“いつもと違う”感覚。祓えばわかりますよ。実際、⋯頭や肩、腕に巻き付くようにして憑いていますよ。──少し、身体こちらに寄せてください」
言われた通り上体を寄せると、目の前を横切るように彼女の手が振られた。
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ちあき(プロフ) - shionさん» 初コメありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!!続編までもう少々お待ちください!! (2022年9月29日 8時) (レス) id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
shion - 初コメ失礼します!!読んだら本当に止まらず、すっごく面白くて!!もっと早くに出会っていたかったですっ…!続編ずっと待ってます!! (2022年9月29日 1時) (レス) @page50 id: f0db8db4d6 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - ttakedasaki0906さん» ありがとうございます!!そうですね、キッドさんも続編以降出せたらなとは思ってます!楽しみにしていて下さい!^^* (2022年9月28日 16時) (レス) id: 1ed832ee63 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - ローの独占欲が最高すぎてニヤニヤしちゃいます笑!!キッドも好きなのですがキッドは登場予定はありますか!?(≧∀≦) (2022年9月28日 0時) (レス) @page50 id: 668cdece5e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - きゃーぽんさん» わあ、、出会ってくれてありがとうございます!!頑張ります! (2022年9月27日 11時) (レス) @page34 id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2022年9月22日 18時