空に溺れる

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その次の日、





「欠席はー、佐田か。
じゃあ副学級委員、号令しろ」



朝のホームルーム、
先生の言葉にドキッとする

Aが学校を休むなんて
珍しいと思った。
珍しいというか、むしろ無いんじゃないか？



なんで休みなんだろう
風邪か。急に寒くなったし、ありえる。

だけど
俺が声をかける関係ではないことが分かったし、彼女が望んでないとも分かった。




「佐田さん大丈夫かなー？」


優太は最近
よくAの名を出すようになった。
それも俺のいる前で。

きっと何かしら想像して
勝手な妄想を膨らませているんだと思う

俺らが好き同士だとか、付き合ってるだとか。



「さぁ、風邪なんじゃない？」

「えーLINEしてやれよー」

「なんで俺が？」

「だって付き合ってんでしょ？」



当たりだ。
やっぱりそんなこと思ってるんだろうと思っていた。




「だからちゃうって…
俺がそんなん声かける関係じゃないから。」


そうは言ったものの
授業中、視界の端に映るがらんと空いた席が
だんだんと気になってくる。

いつも見える グレーのブレザーが見えない。



廉風邪?



送ってしまった。
そのメッセージはすぐに既読がついた



A大丈夫だよ



出た。
彼女お得意の 大丈夫だよ だ。



そんなこと聞いてるんじゃない
俺は風邪かどうかを聞いてるんだ。


風邪じゃないなら、
もしかしたら学校に来れないような理由があるのかもしれない

そこが知りたいから
風邪？なんてLINEを送ったんだ。




廉今どこにおるん?



前では 古典の先生が
しゃがれた声で古文を読んでいる。
シワのある手で黒板に文字を書き連ねている。


「体言になってるのは下に係結びがあるからね、」


優しい口調のその声に
「私が両手をひろげても、」の詩を被せて思い起こす。

彼女は今何をしてるのか
何を思ってるのか
一人でいるのか
泣いているのか

風邪なんかじゃないと
俺はなんとなく気付いているから

余計に心配でたまらなくなる。
彼女はいま、どこにいるんだろう



ふと空を見上げると
鳥が1羽 空を飛んだ

羽を広げ立派に空を飛んでゆく
青く広がる空に まるで溶け込むように。
その鳥は今 空へ溺れるように。




そのとき、スマホが震えた
俺は気づかれないよう 急いでホームボタンを押しスマホを開く


A永瀬くん、今までありがとう




Aのその文字が
はっきりと、俺の視界に映った。

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