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おずおずとそれを受け取った私は、キャップを開けて冷たい水を口に含み、千尋から顔を背けてそれをぺっと吐き出す。


ひんやりと冷たさが残る口の中からは、胃液の匂いも味も消えていて一気に爽快感で溢れた。



千尋は、建物の壁に背を預けるようにしてしゃがみ込んだまま、ポケットからタバコを取り出すとそれに火をつけた。


ふぅ、と紫煙を吐き出した唇がゆっくりと動く。



「お前ってやっぱり馬鹿だな。」


「……は?」


「母親に暴力奮われて、それから逃げる為に自分を売るようなマネして、恋人には約束すっぽかされたんだろ?」


「なっ…」



また傷口をえぐるようなことを言ってくる千尋に噛み付くように言い返そうとした時だった。



「俺から見たら、これだけでもうお前は十分すぎるくらいに傷ついてると思うんだが、まだ傷つき足りないのか?」


「……っ、」


「追い討ちかけるように酒に溺れて男に走るとか…ストイックすぎて引いた。」



やれやれといった感じで、はぁっとため息をついた千尋は、短くなったタバコを地面に擦り付ける。


ゆっくりと私に向き直った千尋。


じっと見つめてくるグレーのアーモンドアイに、吸い込まれそうになる。



そして、千尋はゆっくりと唇を動かした。



「色んな人に傷つけられてんだからさ、」



___そう言う千尋の声は、さっきよりも優しくて。



「お前だけは、お前の事ちゃんと大切にしてあげろよ。」



___私を映すその瞳は、少し悲しそうだった。




千尋の言葉に心臓が鷲掴みにされたようにぎゅうっと締め付けられて息が苦しくなった。


ぶわっとこみ上げてきた熱い涙が、私の頰を濡らす。



なんで、千尋のくせに…


なんで、そんな優しいこと言うの。



今の私には、千尋の分かりにくい優しさが毒のように体に沁み渡っていく。



じっと私を見つめていた千尋の白い腕がすっと伸びてきて、



「髪、口に入ってる。」



短くそう言うと、私の頰に手を添えるようにしてそれを払った。

そのまま滑るように移動した指先が私の横髪を耳にかける。



「…っ、」



優しい手つきとその行動に、心臓がドクンッと変な音を立てたのも束の間。



伸ばしていた腕を戻すと同時に、千尋は口を開いた。



「で、これからどうするつもりなんだ?」


「…え?」


「家は?帰れるなら送るけど、」


「帰れ、ない…」



ポツリと呟くようにしてそう言った私に、千尋は小さくため息をつくと口を開いた。




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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時

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