抱っこにおんぶに肩車 ページ23
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休日の朝。
季節も季節だからか、布団からでると冷気が私を包み込む。
しかし寝室のドアを開ければ、リビングは既に暖房でポカポカと暖かくなっていた。
そしてほのかにいい匂いが私の鼻を通って行く。
いつもそうだ。
私より早起きな千尋は、こうして暖房を付けてしかも毎日美味しい朝ご飯を提供してくれる。
それもカフェで出るお洒落なあれだ。
朝から幸せな気分にさせてくれるの。
私達にこれと言った挨拶はない。
朝起きて、ご飯を食べて自由にする。
その動作動作に会話がない時だってあるくらい。
だからって気まずいわけでもないし、居づらいわけでもない。
むしろここまで無理して話さなくてもいいこの空間を私は好んでいる。
冷蔵庫から材料を取り出し慣れた手つきで料理をしている千尋の姿を見て、私はダイニングテーブルではなくそっちへ近づいた。
そしてキッチンのカウンターに頬杖をつきながらその光景を見る。
野菜を刻んでいく包丁の心地いい音。
フライパンにバターを溶かせ卵液に浸ったパンを焼き始めれば、甘い匂いが広がっていく。
「…慣れてるね。」
「……そりゃあ、お前以上にはな。」
「相変わらず口が悪い。」
「……食べないのか?」
「…………ヤサシクテカッコイイデスネ。」
私に1つ目配せをした千尋は、徐にフライパンの横にある鍋の蓋を開けた。
そこには美味しそうな野菜スープが湯気を立てている。
「なんか、彼氏が料理出来るっていいね。」
「お前の彼氏なんて死んでも嫌」
「なっ、…アンタってなんでいつもそうなの!!
言われなくても分かってるっての!こっちだって願い下げよ!」
「そ、」
いつも通りのドライな返し。
私だけムキになって子供みたいに反乱しても、千尋はどこまでも大人だ。
棚からスプーンを出した千尋は煮込み終わったスープを掬い、私に差し出した。
「え、なに」
「味見。料理出来ないお前でも、これくらいなら手伝えられるだろ」
「はあ?!!」
「ほら早く、垂れる。」
無表情のままスプーンをグッと差し出され、そこから今に垂れてくる雫が目に入り渋々口を開く。
途端、口に広がるのはコンソメのまろやかな味。
「ん、美味しい!」
「そ、」
「んでも、私としてはもう少し濃い方がいいな〜。
…ねえ、少しコショウ加えてみたら?」
「……」
「なに」
感想求めたのに、疑いの目か。
ちゃんと正直に述べたのに、これか。
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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時