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俯いた頭上から聞こえたのは、大きなため息。
思わず顔を上げれば、相変わらずムカつくほど無表情の千尋の顔。
そして、ゆっくりとその口を開いた。
「どうでもいい?…そんな顔して、よく言ったな。」
「…そんな顔って、どんな顔よ。」
「赤 司が好きで好きで仕方ないって顔。」
その言葉に、一瞬息を飲む。
自分が今、どんな顔をしているかなんて考えたくもなかった。
「なっ……、____っ!」
反論しようとした私の言葉は、音にならなかった。
急に襲ってきた吐き気に、咄嗟に口元を手で覆う。
その場にズルズルとしゃがみ込む私の口からは「うっ、」と苦しそうな呻き声が溢れて。
あんなに酒を煽った後に、半狂乱になって叫び散らしたのが仇となった。
もう頭がガンガンと痛んで、胃の中のものが全て逆流すんじゃないかってくらいの吐き気。
「は?何?」
「……っ気持ち悪…い、」
「は?マジで言ってる?吐くのか?」
もう千尋の言葉に返事をする余裕もなくて、なんとか力を振り絞って近くにあった電柱に縋るようにしゃがみ込む。
次の瞬間、「おえぇっ、」と可愛げのカケラもない声とともに胃の中のものが私の口からものすごい勢いで飛び出してきて。
聞くに耐えないような効果音と、私の嗚咽する声が人気のない路地に響き渡る。
「おぇっ」とか「うぇっ」とか、そんな声を上げながら吐き続ける私の背後から聞こえたのは、深いため息。
そして、だんだんと遠ざかって行く足音が耳に響く。
物を吐き出す苦しさよりも、何故かその足音が一番苦しくて、堪らなくて。
「……っ、」
一通り吐き終えた私は、とりあえず自分の汚物を見たくないから、電柱から随分と離れたところにしゃがみ込む。
案の定、そこにいた千尋の姿はない。
見捨てられて当然だ。
何も悪くない千尋に八つ当たりして、挙げ句の果てには目の前で嘔吐するなんて最悪としか言いようがない。
見捨てられて当然……なのに。
どうしてこんなにも、苦しいんだろう。
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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時