お前、泣くの下手すぎ ページ16
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「お腹空いた」
ナポリタンが食べたい気分の私は隣で運転していた千尋にそう呟けば、またまた何も言わずに小洒落たイタリアン店へと車を進めてくれたのだ。
「我儘」だの「お前の意見は聞いてない」なんて言うもんだと思っていたんだけれど…何やかんや言って千尋は私に合わせてくれる気がする。
…いや、これは単に決めるのが面倒くさいだけなのか。
そんな事を一人で思いながら食べたナポリタンは、うっとりする程の美味しさだった。
その夜。
先にお風呂を済ませていた私はローテーブルを前にテレビを見ていた。
ふと、後ろのソファーへと目を向ければバスタオルを肩にかける千尋の髪は湿り気がある。
グレーアッシュの毛先から雫が何滴も落ちて服の肩口を濡らしていた。
「…ねぇ、読み耽るのはいいけどちゃんと髪乾かしたら?」
「……」
「聞いてる?」
「……今の章が終わったら」
「…はぁ。風邪ひいても知らないからね。」
「……」
千尋はお風呂から出るなりソファーに深く腰がけラノベを読み始めるのだ。
私がそう話しかけても、こちらなんて見向きもしないし返事も曖昧。
そんな千尋に呆れを感じながらテレビへと向き直り、飲みかけの麦茶を口にしていれば
「……赤司に連絡しといたから。」
その言葉に自身の目が見開いたのが分かった。
「……そう。」
「…ん。
あの女と縁を切って、お前を迎えに行くんだと。」
「……」
…可笑しいな。
さっきまでテレビの音が聞こえていたのに。
イッテ〇で〇川さんが、カタコトすぎる英語で質問してたはずなのに…
今耳に入ってくるのは、ムカつくほど落ち着いた千尋の声だけだ。
「……そっか。」
「良かったな、大切にされてるじゃん。」
「……」
淡々と話してくる千尋の方から微かにページをめくる音がした。
…そっか。
千尋にとってこんな話は、世間話をするような軽い物なんだ。
……と言うか、興味ないんだろうね。
だってアンタにとっちゃ、自分に被害はある訳もなくただ自分の外で勝手に起こってる事だもんね。
確かに嬉しかった。
征十郎の中に私はいたんだって。
ちゃんと思い合えていたんだって。
嬉しいはずなのに…どうしてだろう、胸が晴れない。
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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時