海へ行こう ページ13
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何処に行くのか分からないまま車に揺れる事、20分。
前にも思ったけど、千尋って結構丁寧な運転をする人だ。
乗車してるのが私相手だったら「死ぬ覚悟で乗ったんだろ?」と言わんばかりに荒い運転されるんじゃないかと思ったがそうではないらしい。
…そんな丁寧な運転に身を委ねて、私は窓の外に広がる昼の街をただ見つめていた。
それから数分が過ぎると、窓の外の景色が変わる。
あ…わあ……
私はもたれ掛かっていた体を起こし遠くに広がる景色に目が見開く。
ビルとビルのもっと向こうに広がる青色。
永遠に続くそれはまるで終わりを知らないようだ。
「…ねぇ、千尋。あそこ!あそこ行こ」
私が指す青色に千尋はチラリと視線だけを向けた。
そして何も言わずに前へ向き直り、慣れた手つきで左に付けられたレバーを上げ、左折する。
可も不可も言わなかったけど、確実にそこへと向かっていた。
「おい、この季節に海ってなんだ、馬鹿だろ。」
先に階段を下る私の後からそんな言葉が聞こえてくる。
確かに今は11月の半ばだし、千尋がそう言うのも無理はない。
海へ入ろうなんて決して思ってないけど、ただ私は誰もいない所へ行きたかったから…その条件を十分に満たしているこの空間に足を踏み入れたかったのだ。
「いいから!ちょっと歩こうよ」
手招きをする私にハアッと溜め息をついたが、ゆっくり私の方へ来てくれていた。
海の匂いのする風が吹き渡り、私の髪を弄んでいく。
意味もなくそこら辺をゆっくり歩き続ける私の後ろを千尋は気怠げについてきてくれて。
「傷心やばい?」
何も考えることなく、浜辺に腰を下ろした私に千尋は見下ろしながらそう言った。
「なんで?」
「海ってそういう時の為にあるもんだろ」
「……はは。どこのドラマよ、それ。」
僅かに間を空けて座った千尋から視線を感じる。
1つ視線を合わせ、私はまた海へと目を向けた。
「…昨日は、アンタの言う通りかなりやばかった。」
「……」
「けど、今はそんな事ないんだよね。
昨日の今日だし思う事はいっぱいあるけど…何でか冷静なんだ。」
「そうか」
あれだけ悲しい事をされたにもかかわらず、目を覚ましてみれば自分でも驚くほど心は落ち着いていたんだ。
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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時