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第八十一話 職場体験へ ページ7





 いよいよ、職場体験の日がやって来た。A達A組は、早朝から最寄駅に集合し、相澤先生の説明を静かに受ける。



「コスチューム持ったな。本来なら公共の部場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」
「はーーい!!」
「伸ばすな。『はい』だ芦戸。くれぐれも失礼のないように!じゃあ行け」


 説明が終わると、生徒達はそれぞれの職場体験先へ移動を開始する。轟は同じ方向に向かうべく、緑谷と麗日と話す飯田を見ていたAに声を掛けた。



「不和」
「あ、轟くん…。少しまっていてくれますか?」
「ああ」


 轟から了承を得ると、Aは真っ先に飯田の元に駆け寄った。先程、スマホを見た時に目に入った、トップニュースになっていた天哉くんのお兄さんの事件。間違いなく飯田の胸に刻まれた傷痕。
 過去17名ものヒーローを殺害し、23名のヒーローを再起不能に陥れた敵―――ステイン。



「天哉くん!」


 振り向いて、こちらに顔を向けた飯田はいつもより小さく見えた。目を離したら最後、どこかに消えてしまいそうだとAは思った。今すぐにでも肩を並べて、傷を分かち合いたい。
 だがそれが、Aにはできなかった。

 かつて、Aは自分の領域に踏み込まれたくなかった。
 ましてや拒絶していた。
 目を逸らしてきた。

 囲うように纏っていたそれを壊したのが、飯田だった。



「む、A君か。どうしたんだ?」
「何かあれば、いつでもメッセージ送ってください。僕は、どこへも必ず駆けつけますから!」
「ああ、わかった」


 それが取り繕った態度なのは、明らかに分かった。微笑んでいる飯田の表情は引きつっていて、目が笑っていない。何も言わなくてもわかる。相変わらず、嘘を吐くのが下手くそだ。

 それでも、今更捨てられなかった。染み付いてしまっている。



「…やくそく、ですよ」


 言葉を呑み込んで、その場で佇む。そのこころに足を踏み込むことが出来ない僕は、よわむしだ。




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はと - おかえりなさいませ〜!馬さんの作品めっちゃ好きなので、ずっと待ってました!改めて、お帰りなさい! (2022年8月28日 14時) (レス) @page40 id: d15a86ccaf (このIDを非表示/違反報告)
旅人 - 更新されてる! おかえりなさい! (2022年8月28日 8時) (レス) id: c3b9825a0f (このIDを非表示/違反報告)
お餅(プロフ) - 更新再開ですか!?待ってましたー!! (2022年8月26日 22時) (レス) @page37 id: 28886abf9c (このIDを非表示/違反報告)
らん - めっちゃ面白いです〜!合宿らへんから、書くの大変になってくると思いますが、めちゃくちゃ楽しみにしているので、是非更新して欲しいです!応援しています!! (2022年8月13日 20時) (レス) @page36 id: 3bb41adb05 (このIDを非表示/違反報告)
千椛(プロフ) - 更新楽しみにまってます!!とても面白いです! (2022年3月5日 9時) (レス) @page33 id: 5a2d0a48cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空天 馬 | 作成日時:2018年6月19日 4時

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