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第六話 回収 ページ8






「はい、携帯ストップ」


 窓の外を見ていたはずの先生が、隙を見せれば外部と連絡を取る、と最初から予想していたかのように振り返る。



「これから、皆の携帯電話と鞄を回収するから。もし、余計なことをしたら・・・」



 ――――バン。先生は大きな声でそう言うと、机の下で携帯を弄っていた一人の生徒の背中を袋で叩き付ける。

 何気なくその様子を見ていたら、何時の間にか後列にいる先生と、目が合った。


 釣り上がった、猫のような双眸が細められる。

 同時に、形のいい薄い唇の片端が上がったのが嫌にはっきりと見えた。



「A」


 あの時と同じように耳元で名前を囁かれて、僕は勢い良く耳を抑える。人質になった今、強く抵抗が出来ないことをいいことに、先生は面白がるように息を吹き込む。



「・・・っ、ぁ」


 ぞくりと熱い熱が走り、気付けば声が漏れていた。

 しまった、と口元に手をやって顔を上げると、視線が僕に集まっているのが分かる。



「・・・コイツに近寄んな」

「甲斐、君」


 羞恥に襲われて動けないでいると、先生と僕の前に甲斐君が立ち塞がった。



「ほら、携帯貸せ」

「え、あ・・・はい」


 威嚇するように先生を睨み付けたまま、甲斐君は僕から携帯を受け取ると、袋の中に入れる。それから周りを鋭い目で見れば、恐れを抱いた皆は前を向く。

 僕は、助けられたのだろうか?



「甲斐君、ありがとう」

「・・・別に」


 彼は無愛想にそう返すと、前に向き直る。そんな彼と話がしたくなって、人差し指で甲斐君の背中を軽く突く。

 すると、甲斐君は大きく肩を揺らして椅子から転がり落ちてしまった。



「だ、大丈夫・・・とは言えないね」


 どうやら、僕は彼を驚かせてしまったみたいだ。

 手を伸ばして甲斐君を起き上がらせようとすると、髪の隙間から赤く染まった耳が見えた。




「初心だねえ」


 そんなことをしている間に、先生は全員分の荷物を回収したのか、教卓に手を置いて僕達を見ながら、にやりと笑う。





第七話 始まりの鐘→←第五話 小戯曲



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設定タグ:3年A組 , 男主 , 柊一颯
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蒼炎(プロフ) - とても面白いです!主人公と柊先生の絡みが物凄く好きです!続き待ってます!お願いします!! (2021年4月20日 22時) (レス) id: bdaf0ebad8 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか?すごく面白いので続きが見たいです。更新楽しみにして待っています! (2020年9月27日 1時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - もう更新しないのでしょうか?是非、待ってます! (2020年9月7日 21時) (レス) id: 62727f5aad (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - 物凄く大好きです!これからも頑張ってください!楽しみに待ってます!! (2019年4月6日 15時) (レス) id: 4cf65d0de3 (このIDを非表示/違反報告)
九重 - じわじわと男主を喰っていく柊先生(精神的に)ドロドロとした独占欲が堪らない!堪らない!ありがとう!ありがとう! (2019年3月28日 23時) (レス) id: b60eca276a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空天 馬 | 作成日時:2019年1月13日 0時

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