第一話 少女の呟き ページ3
突然だけど、この高校には絶大な人気を誇る、ある一人の生徒がいる。
―――
その名は、この学校で知らない人はいない。
数々のピアノコンクールで優勝し、それを驕らない謙虚な姿勢の優しい性格。ただ、それだけではない。
A君が人気なのは、その容姿にもある。
一切染めてない、自然な色素の薄い黒髪。完璧な位置にある目鼻立ち。A君は、見ているだけで息を呑むような美貌をしていた。
A君は、あまり教室で過ごすことは無い。
授業が終わると、すぐに席を立って何処かへ行く。きっと、音楽室に居るのだろう。そのことも学校では有名だった。
休み時間になると、音楽室の前は人で殺到する。
ドアの向こう側から聞こえる、A君の演奏を聞くために。中に入ればいいのでは？と思う人もいるだろうけど、それは出来なかった。
―――いや、出来ないんだ。
少し空いたドアの隙間から見えるA君は、幻想的だ。鍵盤を押す度に、何だか空気が浄化されているように見える。
大袈裟だと否定する人もいるだろうけど、それは本当だった。
だから、誰も音楽室には入れない。
その雰囲気を壊すのを恐れているから。
遠くから目にする。それだけで、十分なのだ。
でも、ある日―――それは変わった。
放課後、私は音楽室に忘れ物をしたのを思い出した。早く部活にも行きたいし、あのことも忘れて、私は音楽室のドアに手を伸ばす。
「――――ぁ」
「・・・誰？」
耳に馴染む様な、高くも低くも無い声。振り返ったA君の双眸が私を捉えていて、ぼんやりと見惚れる。
しかし、次にA君が呟いた一言に、思考が停止した。
「景山さん、だったかな？」
「お、憶えてくれたの？」
A君が、私の名前を憶えていてくれた。
その嬉しさが胸いっぱいに広がる中、A君は困ったように眉を下げた。
「クラスメイトの名前ぐらい憶えるさ」
それから私は、放課後になると部活へ行く前に、音楽室でA君と話すようになった。
A君は人と関わるのが苦手なそうだ。昔から周りの人達はA君を避けるから、いつからか一人を選んだ。
それは、避けるというよりも、崇めるているからでは？何て言い辛くて、遠回しに言って励ました。
だけど、それも今日で終わりだ。
ごめんね。
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蒼炎(プロフ) - とても面白いです！主人公と柊先生の絡みが物凄く好きです！続き待ってます！お願いします！！ (2021年4月20日 22時) (
レス) id: bdaf0ebad8 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか？すごく面白いので続きが見たいです。更新楽しみにして待っています！ (2020年9月27日 1時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - もう更新しないのでしょうか？是非、待ってます！ (2020年9月7日 21時) (レス) id: 62727f5aad (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - 物凄く大好きです！これからも頑張ってください！楽しみに待ってます！！ (2019年4月6日 15時) (レス) id: 4cf65d0de3 (このIDを非表示/違反報告)
九重 - じわじわと男主を喰っていく柊先生(精神的に)ドロドロとした独占欲が堪らない！堪らない！ありがとう！ありがとう！ (2019年3月28日 23時) (レス) id: b60eca276a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空天 馬
| 作成日時：2019年1月13日 0時
