第三十八話 白装束の時間 ページ8
雨音にも負けないくらい、教室内はある情報で賑わっていた。
律に続き新たな転校生が来ると。十中八九、只の転校生ではないのは確かだろう。
「そーいや、律は何か聞いてないの?」
律の前の席である原が、クラスを代弁して転校生について聞く。
「はい、少しだけ。初期命令では──」
成る程、やはり只の転校生ではないらしい。
本来、律と転校生は同時期にクラス入りし、律が遠距離。転校生が近距離と、連携して攻撃を行う予定だったそうだ。
だが、それは二つの理由で白紙になった。
一つは、転校生の調整に予定より時間が掛かったから。残る理由、それは律が転校生より圧倒的に劣っていた為。
皮肉めいていて虫唾が走る。
「……!」
その時、大きな音を立て突如として教室のドアが開かれた。その音に肩を震わせ、律の方を向いていた生徒が反射的にドアの方へと振り向く。
教室に入って来たのは―――白装束に白覆面で顔を隠した男。
最初からドアを見据えていた俺は、その歪さに目を細めて警戒を強める。
「ごめんごめん、驚かせたね。転校生は私じゃないよ。私は保護者だ」
突然姿を現し、転校生の保護者だと名乗る男は、シロとでも呼んでくれと簡潔に自己紹介を済ませる。
どうもこの男は不気味だ。
覆面で表情が窺えないが、隙間から覗く瞳が妙に禍々しい。
「では紹介します。おーい、イトナ!入っておいで!」
男が転校生を呼ぶ。その呼び掛けで教室内は緊張感に包まれ、ドアに注目が集まる。瞬間、背後から感じた悪寒。隣の席に視線を逸らせば、後方の壁が破壊される音と共に一人の男が座っていた。
「俺は勝った。この教室の壁よりも強いことが証明された。それだけでいい。……それだけでいい」
頬すれすれに飛んで来た木の破片を掴みながら、内心思う。
いや、知らん。普通にドアから入ってこれないのか。
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柑橘類(´;ω;`) - まさかのポ○モンww (2022年3月8日 1時) (レス) @page16 id: b9050f97b8 (このIDを非表示/違反報告)
夢莉(プロフ) - 最高です!とても面白いです!更新頑張って下さい (2019年10月20日 21時) (レス) id: 86330688ee (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 面白すぎます。描写とかたくさん書かれていて読むのが楽しいです、頑張ってください (2019年9月4日 23時) (レス) id: 94e906f1db (このIDを非表示/違反報告)
空天 馬(プロフ) - カイさん» ありがとうございます〜 今のところは誰、とは考えてないですw (2019年8月21日 22時) (レス) id: e9bd85a3ea (このIDを非表示/違反報告)
カイ - ヒロインとかはいたりしますか? 面白いです! (2019年8月21日 14時) (レス) id: 0a1f4d95ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空天 馬 | 作成日時:2019年8月17日 4時