検索窓
今日:32 hit、昨日:104 hit、合計:794,425 hit

第十五話 旅行の時間 ページ17






 俺には唯一、苦手な行事がある。
 教育や学校行事の一環として、教職員の引率により児童・生徒が団体行動で宿泊を伴う見学・研修のための旅行。

 即ち、修学旅行。
 今でも蝉の鳴き声が耳の奥底にこびり付いて離れない。





「皆、班が決まったら私か磯貝君に伝えてね」


 テストが終わると、来週から京都へ二泊三日の修学旅行が始まる。だが、ただの修学旅行ではない。班ごとに分かれて回るコースを決め、黄色い生物がそれを引率するというのは普通の修学旅行と同じ。

 ここからが普通ではない。京都の街は、校舎内と比べて遥かに広く複雑に入り組んでいる。 狙撃手(スナイパー)を配置するには絶好の環境な為、国は狙撃のプロ達を手配したらしい。

 まあ、要はアレだ。俺達には暗殺向けのコース選びをしろとのことだ。



「天霧君!良かったら同じ班にならない?」

「俺でよければ」


 驚いたことに、真っ先に俺を誘って来たのは潮田だった。こういう状況になると、普段から仲の良い友人同士で組むだろうに。



「お、天霧がいるならカルマのことは安心だな」

「ソレ、どういう意味〜?」


 断る理由も無い。その輪に加われば、他の班員も集って来た。メンバーは杉野に潮田。カルマと茅野、奥田に神崎。

 バランスが取れた丁度いい班だ。



「一人一冊です」

 
「……重っ」

「何これ、殺せんせー?」


 コース決めに熱中している班員の姿を背後から眺めていると、黄色い生物から分厚い本が配布された。



「修学旅行のしおりです」

「「辞書だろコレ!?」」


 確かに重い上に、しおりの範囲を超越している。この分厚さは辞書と言っても過言ではない。最初に目についたのが『旅の護身術入門から応用まで』。

 実用性があるとは言えないが、いずれ役には立つだろう。



「大体さぁ、殺せんせーなら京都まで一分で行けるっしょ」

「移動と旅行は違います。皆で楽しみ、皆でハプニングに遭う。先生はね、君達と一緒に(・・・・・・)旅できるのが嬉しいのです」


 目を細めて語るその姿が、ただ眩しい。







第十六話 移動の時間→←第十四話 煽りの時間



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (715 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1438人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

(プロフ) - 今更なんですがとてもハマりました。これからも応援しています。 (2021年5月23日 2時) (レス) id: 0cbe8ba716 (このIDを非表示/違反報告)
腐女神だぜ☆(プロフ) - コメ失礼します。主人公がくっそかっけえです。これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2019年8月16日 20時) (レス) id: b63828eb3d (このIDを非表示/違反報告)
浅野月愛(プロフ) - 初コメ失礼します!いつも天霧くんのカッコいい行動にドキドキさせられています、これからも更新頑張ってください!(急かすつもりとかはないので) (2019年8月15日 11時) (レス) id: e6ca85b3e9 (このIDを非表示/違反報告)
- 続き、楽しみにしています。 (2019年3月31日 22時) (レス) id: 67a2382333 (このIDを非表示/違反報告)
御子柴(プロフ) - 好きです!!!! (2019年2月23日 3時) (レス) id: 5350486dcc (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:空天 馬 | 作成日時:2019年2月14日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。