第五話 ページ7
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まさか、ほんとにウシワカちゃんに勝っちゃうなんてね。
飛雄が俺より先にウシワカに勝つのもシャクだけど、今回は仕方ないか。
てゆーか……
「ウシワカ野郎はもっと悔しそうな顔しろっつーんだよ。」
「ほんと、及川くんってとしくんのこと嫌いだね。」
ﾋﾞｸｯ
背後から聞こえたこの声は…
「Aちゃん！！」
「やっほ、たまたま見えたから来ちゃった。岩泉くんも久しぶり。」
「よぉ、久しぶり。」
Aちゃんとは、中学3年の時に知り合った。
知り合う前から、白鳥沢中等部の女子バレに美人で上手いセッターがいるってもっぱら噂だったから興味は持っていた。
県の選抜メンバーに招集された時、初めてプレーを見た。
キレイなセットアップ
冷静沈着な判断力と広い視野
スパイカーの癖や得意なところを見極めて、その最大限を引き出すセッター
まるで俺だと思った。
女子にもこのようにプレーできるセッターがいるのに驚いた。
「それにしても影山…いい仕事しやがるな…」
岩ちゃんがﾎﾞｿｯと呟いた。
「…岩ちゃんも気づいた？」
「カゲヤマ？」
「クソ生意気な烏野の9番セッターの名前だよ。」
「あ、あの子ほんとにすごい。いい仕事って最後に10番くんとシフトしたやつ？」
「Aちゃんも気づいたんだね。飛雄のやつ、ほんとにムカツク程見えてやがる。」
「まあ、その良い仕事の前提にあるのは一年眼鏡のブロックだけどな。」
「今日初めてプレーを見たけど、烏野は荒々しいしウチみたいな安泰な基盤はないのに個々がしっかり連帯してるチームらしい良いチームだね。」
そう言ったAちゃんの視線は、飛雄を捉えていた。
…ムカつくなぁ、飛雄
「さぁー！！帰んべ！帰んべ！！」
「気をつけてね。またご飯でも行こ！」
「そーね！ウシワカちゃんにもよろしくね！」
俺がAちゃんに声をかけた中学3年のあの日、
後ろからのウシワカちゃんの視線がすごく痛かったけど
そんなの気にせず仲良くなってやった。
あんな幼なじみに勝てるわけないんだからいいじゃんかっ！って思ってたけど
そんな超高校級エースでも勝てないものが出てきたかもね…
ウシワカちゃん。
「もうAのことはいいのか？」
「うるさいっ！岩ちゃん！何のためらいもなく呼び捨てできる岩ちゃんがうらやましい！」
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作者名：にゃん吉 | 作成日時：2020年1月21日 23時
