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092 side T ページ42

“私…剛典が好きよ”






その唇が、そう囁いた。









 








「臣さん……」


あれからまだ30分も経っていない。


「…悪かったな、岩田」





伏し目がちに口角を上げた臣さんは

変わらず
悔しい程かっこ良かった。



「いえ。返してくれてありがとうございます」

「…ばーか。
 最初から奪おうなんて思ってねぇよ」



その言葉に偽りが無い事も
最初からそのつもりだった事も

解っていた。




でも、Aを感じるまでの数時間





怖かった。





きっと臣さんなりに考えて
臣さんなりに答えを出したんだろう。



 “臣さん。お願いがあります。

  明後日…俺に紗希を貸してもらえませんか?”



あの日の、俺みたいに。


だから



 “酷い同期(オトコ)でしょ?”

 “最高の同期(オトコ)よ?”



曖昧な世界の中で

二人がどんな時間を過ごしたかなんて

知る必要はない。




「臣さん、紗希を幸せにして下さいね?」

「ははっ。A、頼んだぞ?」



例えそこで

聞くに堪えない事が起こっていようとも。









 









俺を迎え入れたAは

バスタオルを握りしめたまま立ちつくしていた。



「ははっ、拭いてくれるんじゃないの?」



愛しい(ヒト)

まるでさっきの臣さんを写し鏡にしたように
伏し目がちに口角を上げながら頬笑み



「…おかえり、剛典」



俺にタオルをふわっと被せ、一緒に納まった。



ほんのり香るAの過去に心が痛んだくせに

それでも

どんなにその香りを纏っていようと

愛おしいと思ってしまう俺は



可笑しいのかな。









水音だけが響くバスルーム。



「なーんで泣くの?」



いつだって凛としているはずのAが

その身体を辿る度

堪える事も、コントロールする事も出来ずに
俺の前で無防備に流す涙が

嬉しくて堪らない。





「好きだよ、A」




やっと伝える事が出来たその言葉。

涙が綺麗で、愛おしかった。




だから、心にまだ誰かが居ようと


 “逃げたのよ。あなたは…”

 “苦労なさるのはAさんだと思います”




俺はもう逃げない。



俺が守る。






 “私…剛典が好きよ”



「A…」




苦しそうに

幸せそうに



何の偽りもないAのその顔を


俺だけのモノにする。




「もう、後戻りさせないよ?」

「…お手並み拝見ね?」



挑発的なその瞳ごと



全力で愛するから覚悟しろよ?


 

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設定タグ:岩田剛典 , 三代目 , 登坂広臣   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - kotanonさん» 更新遅くなってすみません^^;ありがとうございます!3も、お付き合い頂ければ嬉しいです^^♪ (2020年6月24日 7時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
kotanon(プロフ) - 空さ〜ん☆更新ありがとうございます!! これからの展開も楽しみにしてます♪♪ (2020年6月24日 0時) (レス) id: 3c70e90779 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ねーやんさん» お久しぶりです!お手間とらせてすみません^^;移行になります!よかったらまたよろしくお願いします^^ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ユキさん» 行きましたよ―笑ついでにATMもww (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わ…びっくりしました(笑)お久しぶりです。久々すぎても一度読み返しまーす(笑) (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年3月8日 16時

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