068 side you ページ18
電話口から聞こえた剛典の声は
地の底からじわじわと響く様な
凄みの効いた低い声だった。
「下に居るんだけど」
剛典のこんな声は、聞いた事が無い。
無言の圧。
「…今開ける」
それ以外
私に選択権はないと言われている様だった。
“…化粧室行って来る”
あの後、剛典の顔を見る事無く
しかも広臣と一緒に帰宅してしまった気まずさから
剛典が部屋に着くまでの時間
無駄に玄関までの廊下を往来していた。
「おはようA」
玄関先の剛典は
そう言いながら口角を上げていたけど
瞳の奥が異様に鋭く
その視線を否応なしに浴びせられた私は
背中がゾクッとした。
その視線から逃れようと
これが一番自然な流れだと言わんばかりに
スリッパラックに視線を移す。
「…上がって？」
二足ある来客用のスリッパのうち
剛典を招き入れた。
リビングのソファー。
さっきまで広臣が座っていたその場所に
今度は剛典が座っている。
その構図に
何とも言えない複雑な心境になった私は
勝手にそわそわしていた。
駄目だ。落ち着かない。
「……コーヒー淹れるわね？」
「A、先に座って」
逃げ出そうとした私に、もう一度“圧”が掛る。
変わらない声の低さと瞳の鋭さは
私に選択権を与えていない。
一人分空けて座ろうとした私は
「…っ」
強引とも言える強い力で
さっきとは
その香りの中で
重低音の様な心音がドクドクと耳に響いて来て
剛典がどれだけ心を乱しながら
この部屋に足を踏み入れたのかを知った。
「…盗聴器」
「っ！」
突発的に呼吸が詰まる。
「昨夜帰った理由、盗聴器だよね？」
腕の中で頷きながら
今度は私の心臓が暴れ出し、同時に緩んだ腕の力。
…何で知ってるの？
解放したかに見せかけたその腕は
ゆっくりと腰の位置まで下がり
重なった額と鼻先。
「解決した。もう大丈夫だよ」
「………どう言う事？」
午前3時の小林さんからの電話。
望美さんからの呼び出し。
“目的が西嶋Aなのか、秘書の私なのか”
後者だった。
秘書の私が、狙われたんだ。
“お一人ですか？”
私の軽率な行動が原因だ。
あの夜。
自堕落にさえならなければ…。
「私………秘書失格ね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1599人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空(プロフ) - kotanonさん» 更新遅くなってすみません^^;ありがとうございます！３も、お付き合い頂ければ嬉しいです＾＾♪ (2020年6月24日 7時) (
レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
kotanon(プロフ) - 空さ〜ん☆更新ありがとうございます！！ これからの展開も楽しみにしてます♪♪ (2020年6月24日 0時) (レス) id: 3c70e90779 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ねーやんさん» お久しぶりです！お手間とらせてすみません^^;移行になります！よかったらまたよろしくお願いします＾＾ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ユキさん» 行きましたよ―笑ついでにATMもｗｗ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わ…びっくりしました(笑)お久しぶりです。久々すぎても一度読み返しまーす(笑) (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2020年3月8日 16時
