逢魔時 〜時を越えた絆〜5

act13-2 ページ17

話す、とは言ったものの、お母様は口を閉ざしてしまった



話してくれるのを、黙って待つ




母「・・・私にとって貴女のことで最も古い記憶は、満開の桜の下で、幼い貴女が眠っていた時のことです」



それを聞いて、私は驚きを隠せなかった



なぜなら私が覚えている記憶も、その時からのものしかないから・・・




お母様も・・・それ以前の私を知らないんだ・・・






母「・・・これから話すことは、とても受け入れがたいことかもしれません」



お母様は真っ直ぐと、しかしどこか悲しそうな瞳で私を見つめる



お母様も・・・覚悟を決めて伝えようとしているのだと分かった




私が頷くと、一呼吸置いてお母様は話を続けた









母「Aさん、貴女は私達の・・・、西行神社の本当の娘ではありません」









覚悟が足りなかった




動きが、思考が止まる




真っ黒になりかけた視界にお母様の心配そうな表情が映り、ハッと我に返った





母「・・・ごめんなさい、いつかは・・・打ち明けるつもりでした」

「・・・私は・・・」



じゃあどうして私は、この神社に・・・？



「・・・お母様が知っていることを、教えて下さい」

母「・・・分かりました」



まだ頭は混乱していたけど、何とかお母様の話を聞こうと集中する


お母様は再度、真剣な眼差しを私に向けた




母「私とお父様はある日、神社の桜の下で倒れていた貴女を発見しました」


目を覚ました時のお二人の表情が、今でも鮮明に覚えている


母「貴女は名前以外の自分に関する記憶を失っていました」

「え・・・？」

母「なのでどうして神社にいたのか、自分が何者なのかを貴女は覚えていませんでした」



その時から既に・・・、それ以前の記憶がなかったんだ・・・


母「しかし貴女は凄まじい退魔の力を身に宿しており、始めは西行神社の関係者だと思いました」


ここ西行神社の家系の者、及び関係者は代々、強い退魔の力を持っている


母「ですがどの家系を探しても、貴女の名前はありませんでした」

「・・・では、私は西行神社とは全くの無関係・・・だったのですね」



答え辛そうに、お母様は俯いた



母「おそらく・・・、Aさんは本当の両親に捨てられたのだと・・・思います」




自分でもそんな予感がしたからか、不思議とショックを受けなかった

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