逢魔時 〜時を越えた絆〜

act3-4 ページ31

部屋を叩く音で目が覚める


襖を開けると、手越さんが心配そうな表情で部屋の前に立っていた



手越「Aちゃん、大丈夫？昨日・・・晩御飯食べてなかったから・・・」

「え・・・、あ・・・そういえば・・・」


昨日は夜遅くまで神楽の練習をしていたため、夕飯を食べることすら忘れてしまっていたようだ


「・・・お腹・・・空きました」

手越「これから朝ご飯だから、一杯食べて体力回復しないと！」

「回復？」

手越「だってAちゃん、顔色悪いよ？昨日結界柱に力を与えて疲れたんじゃない？」


確かに退魔の力を使うには多少体力を消耗するけど、あの程度は全く問題ない


神楽の練習のし過ぎで疲弊していたんだ・・・


自分の気持ちを抑えたい一心で神楽を舞っていたため、疲労にも、空腹にも気付けなかった



とにかく手越さんにこれ以上心配をかけないよう、私は笑顔を作った


「あれくらいなら大丈夫です、きっと空腹が原因かと」

手越「そう？なら早く食べよう！」

「はい」




食事は机と座布団が並ぶ大部屋が食堂となっていて、皆で食べている


旅館の宴会場みたいな感じかな？宴会はしないけど・・・


私の近くには私の他に座布団が4人分あり、手越さんと増田さんがそのうちの2か所に座っている


後の2か所は勿論これから来る二人が座る予定だ


・・・その人達は大丈夫かな？怪我してなければいいけど・・・




昨日夕食を食べていなかったため、いつも以上の早さで私は朝食を平らげていた


「御馳走様です」

増田「早いね、相当お腹空いてたんだ」

手越「昨日晩御飯食べなかったんだ、仕方ないよ」

増田「そういえば、昨日はどうしたんだ？Aちゃんのお母さんが呼びにいったみたいだけど」

「気が付きませんでした、皆さんには・・・本当に心配をおかけしました」


私は何かに、特に神楽の練習に没頭すると、周囲の状況に疎くなってしまう悪い癖がある


以前も何度か同じようなことはあったけど、大体自分で空腹に気付き、一人遅めの夕食をとっていた


今回も同じだろうと思い、お母様は待っていたのかもしれない



「・・・・・」

手越「・・・なんか、朝からボーっとしてない？悩んでることがあるなら言ってよ」

増田「俺達でよければ力になるから」



何を悩んでいるかは、自分でも分かっている


けれど、迷惑をかけたくない



そんな気持ちから・・・




「いえ、大丈夫です」




・・・そう答えていた

act3-5→←act3-3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す