【刀剣乱舞】霊力循環異常症候群Ⅱ型専門医助手 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:4,576 hit

・ページ6

話を全て聞き終わったへし切長谷部は、床を見つめたまま、こめかみを押さえた。

　「すみません。診察は感情が整理できてからで構いませんか？」

「ええ。どうぞ」

「ありがとうございます。五分ほどここでお待ちください」

　そう言って、へし切長谷部は応接間を出た。

　ドアの向こうから、ため息と共に彼の独り言が漏れ出てくる。

　顔こそは平静を装っていたが、彼の声には、この世の全てを呪ってやるとでも言いたげな絶望が含まれていた。

　へし切長谷部は、本当に五分で帰ってきた。さすが、戦場に身をおく者と言うべきだろうか。

　私たちは、審神者のいるという部屋へ通された。

　ここの審神者の症状は、理性の喪失。早期発見すれば比較的簡単な治療で審神者活動も継続可能だ。だが、それが叶わなかった場合、最も周囲の人間が苦しむ症状でもある。

　通吉によれば、ここの審神者は後者だ。

　へし切長谷部に案内された部屋の中央、そこにその審神者はいた。

　「主。お二人をお連れしましたよ」

審神者のすぐ横に座り、審神者の顔を覗きこみながら言う彼は、まるで忠犬のよう。

　だからこそ、見ていて辛いのだ。

　「ヴオォォォ……」

審神者は、へし切長谷部の声に応じ、呻くような声をあげる。

　もう、話すことすら出来ないのか。かなりの重症だな。通吉に目をやると、彼も顔をしかめていた。