（27-��.） ページ36
｢…着いちゃった｣
｢…だな、じゃあ｣
Aと樹の声は少し沈んでいた。
樹はゆっくりとAに背を向け、帰ろうとする。
｢待って樹!｣
Aはそう言うとクルッと自分の家の門の方を向き、樹に背を向ける形でヒョイっと手を挙げた。
｢これ、1回やってみたかった｣
｢どゆこと?｣
｢お互いの顔を見ないで、かっこよく…サヨナラする｣
｢最後まで、Aだな｣
樹のいつもと変わらない優しい声を聞くのもこれが最後だと思うと、Aの頬を涙が静かに流れた。
Aは、背を向けたおかげで樹に涙を見せなくて済んだと思ったが、樹はAの微かな鼻をすする音に気づいていた。
しかし、気づいてないフリをした。
そして樹自身も、徐々に熱くなる目頭に気がついた。
｢…バイバイ、樹｣
Aは少し震える声で、それでも明るくそう言った。
｢じゃあな、A｣
樹は、そんなAのことを包み込むような穏やかな声で最後の別れの言葉を告げた。
本当は抱きしめたいその背中が小さくなるまで見守り、自分もゆっくりと背を向けた。
Aと樹の頭上には大きくてまん丸な月が浮かんでいた。
そのマンガに出てくるような美しい月に、ふたりとも気がついていた。
しかし、どちらもそのことについてふれなかった。
ふれてはいけない、と思っていた。
自分たちは思い出の話をしていたのだ。
今の話をしてはいけない、新しい思い出を作ってはいけない…そんな思いがふたりの心のどこかにあった。
でも確かにその月は、Aと樹の視界の端にあって、その後ふたりは月を見ると、何となく、お互いを思い出すのだ。
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さいか(プロフ) - ちいさん» お褒めの言葉、ほんっとうに嬉しいです(;_;) 最後までどうぞよろしくお願いします！！！ (2019年1月25日 20時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます！ ぜひ、最後まで楽しんでください！！ (2019年1月25日 20時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 初めて読んだ瞬間、なんて素晴らしい文章力だろうと感動しました。個人的に大我くんが好きなので、女の子と上手くいって欲しいな…と祈りながらも楽しく読ませて頂きます笑 これからも応援しています。 (2019年1月24日 20時) (レス) id: a3ba396e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 今回の作品もとても楽しみにしています！ (2018年12月21日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年12月20日 23時
