日常 ページ10
転入してから1週間が経った。
相変わらず休み時間になると教室には
他のクラスや学年の男の子たちが
野次馬みたいにあたしを見に来る。
だけど。
樹「緋織〜ジュース買いに行こうぜ！」
慎「あっ俺もいくー！」
ジ「あっ俺も、、、いくー！」
高「あ、樹お茶買ってきてお茶！」
き「あ、おれカフェオレ！」
北「アイスティー」
1人が話すとみんな話し出すからもう大変。
「…お茶とカフェオレとアイスティー。」
樹「お前ら自分でいけよー」
き「でも買ってきてくれるでしょ？樹」
慎「出た！きょもの甘えた！」
樹「俺、きょもの甘えたには弱いんだよー」
高「どうでもいいけど、緋織に買わせるなよ！」
「いいよ、別に。」
ジ「いやっ！ここはジャンケンしよう！」
慎「ちょっと待って、手札見るから！」
樹「なんでノリノリなんだよ！」
もう。
いっつもなかなか話が進まないんだから。
「……。」
まだ先が続きそうだから、先にジュース買ってこよ。
みんなを置いて、教室を出る。
購買の横の自販機に着くと、
みんなのリクエストのボタンを押していく。
「あ、結局樹たち何飲むんだろ…」
肝心の3人のリクエストを聞き忘れて
しまった、と思っていると静かにあたしの横に人がきた。
横を向くと、
「あ………」
北「………。」
「あの、」
北「…あいつらまだジャンケンしてる。」
「…ははっ、休み時間に終わるの、それ」
北「さぁ。知らねー。」
あたしの方を全然見ない北斗とは
転入した初日以来、視線がぶつかることはなかったけど
ひとつ分かったことがある。
今もそう。
彼は言葉にこそ出さないけど
こうやって静かにやってきては手伝ってくれたり、
騒ぐ彼らから1人離れてるように見えて、
実は1番彼らを見てるのは北斗だったりする。
いつの間にか北斗の手にはコーラと水とポカリがあって、
北「…教室、行かねーの？」
「あ、行く。」
先に行く北斗の背中を追いかける。
あたしが何買っていいか分かんなかったの、
見抜いてくれたのかな。
「……ありがと、北斗。」
北「別に。」
最近、北斗の分かりづらい優しさがわかるようになった。
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作者名：hiori | 作成日時：2019年10月3日 2時
