孤高のアネモネ【HokutoMatsumura】 (ページ44)

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side 北斗ページ44

いきなり鈍器で頭を殴られた様な、

そんな重い衝撃が走った。

俺は、一体何を聞かされているのだろうか。

これれ本当に緋織の話なんだろうか…。

血の繋がりはなくても最愛の妹のため、
『彼』は自分の実の両親を殺めてしまった…

　

翔「それがどれだけ重い事なのか…

それがどれだけ重い"想い"なのか。

彼女は、緋織は、

その重すぎる"想い"を、僅か13歳で背負ってしまった。

いい歳の大人でも容易に耐えれるものでは無いよ。」

淡々と続ける櫻井さんの話に頭が追いつかない。

俺の予想を遥かに越えた、にわかには信じがたい話。

翔「…当時、まだ緋織は中学1年生。

警察の話によると、
緋織が見たのは横たわるニノの両親と

血まみれで自分の両手を見つめるニノの姿…

普通、まだ10代の、それも心が成長途中の子供は
過去の記憶を心理的に消そうとし
一部、記憶喪失になる事も少なくない。

一般に心因性記憶障害と言われてるものなんだけど…

でも緋織はすべての記憶を鮮明に覚えてるんだ。」

俺はもう櫻井さんを見る事さえ出来なかった。

ただただ、

目の前の珈琲カップを見つめる事しかできなかった。

そんな俺に問いかける様に櫻井さんは言う。

翔「……松村くん、……君は想像できる？

いつでも思い出せる良い思い出なら、それは幸せだ。

だけど、緋織の場合は違うんだ。

忘れたくても忘れる事のできない記憶。

……ふと視界に入った兄妹の姿、

もしかしたら赤い血の色…。

何が引き金になるのかは分からない。

だけど何かと思い出しては、

その度に自分を深く傷付ける。

自分で制御する事のできない、心への自傷行為。

緋織はそれを、もう3年以上も続けているんだ…」

俺は声をも失っていた。

想像なんてできるはずがなかった。

目に浮かぶのは楽しそうに笑う緋織の顔。

壮絶なその体験がまるで全て嘘かの様に思えるほど。