孤高のアネモネ【HokutoMatsumura】 (ページ43)

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side 翔ページ43

ニノは俺の友人でもあった。

学年は違うけど同じ大学でね。

結構難関大学だったけど、首席で入学してきた秀才で

未来を期待されてた1人だった。

周りはカズ君って呼んでたけど、

俺たちはニノってずっと呼んでたな。

翔「松村くん、大丈夫？」

北「………はい」

もうすでに青白い顔の彼は唇を噛み締めると
小さくもしっかりとした声で答えた。

翔「じゃあ、続けるね」

ニノは両親にバレないように毎日緋織に勉強を教え、

時には「転んだ」としか言わない緋織の怪我を

手当てしてあげてたそうだ。

だけどそれも長くは続かなかった。

里親夫婦にバレてしまったんだ。

里親夫婦はニノに相当愛情を注いでいてね。

特に母親はニノを溺愛していた。

ニノもそれを分かっていて、

期待に応えるように過ごしてきたらしい。

だけどニノも当時まだ大学生だ。

自分を溺愛する両親が

突然やって来たとはいえまだ幼い妹を下等に扱う姿…

今まで知り得なかった

両親の性根を目の当たりにしてしまった。

そのストレスか、次第にニノは成績が落ち出した。

それでも上位には居たけどね。

だが、首位からの転落に

両親は酷く敏感に反応したらしく

母親は緋織が本来のニノを奪ったと激昂したらしい。

お前に息子の時間は渡さない

お前に息子の邪魔はさせない

息子を返せ

私の息子を返せ

そう緋織に怒鳴るようになったらしい。

そして何が起こったと思う？

本当の意味で、事の真相は本人にしか分からない。

3年前の梅雨前だったかな…

まるで蒸し風呂みたいに暑い日だった。

その日、

ニノは緋織と自分の為に

自分の両親を犠牲にしたんだ。