side 翔 ページ40
『櫻井さん、1番に受付から内線です。』
翔「ああ。」
珍しく俺個人に受付から内線がかかる。
翔「はい、こちら秘書室櫻井です」
『櫻井さん、個別にすみません。
お客様がお見えなんですが、学生さんでして…』
翔「学生？」
『はい、松村様という方でして…』
翔「分かった、直接下まで行くから待ってるように伝えて？」
学生…
きっと緋織の友達だろうが、何となく胸騒ぎがする。
今社長も会長もミーティングで席を外している。
急いでスケジュールを確認し、
秘書室の部下に1時間ほど席を外すと伝えると
俺は急いでエントランスへ向かった。
翔「お待たせしました…あぁ、君か」
エントランスのソファに座っていたのは
やはり緋織の"お友達"だった。
ただ、他の5人とは違う雰囲気の子。
北「忙しいところすみません。」
ぎこちなくだが律儀に彼は俺に頭を下げると
時間、いいですか？と言った。
翔「あぁ、丁度昼飯食ってなかったから。どっか入るか」
北「……」
別に話もせず彼は俺の後をついてくる。
近くの喫茶店に入るとアイスコーヒーを２つ頼んだ。
翔「で、早速だけど。緋織がどうかした？」
俺のストレートな問いに驚いたのか
彼は少し目を見開くと、静かに話し始めた。
彼によると話は大体こうだ。
緋織が昨日の昼間、3人組の男に襲われた。
助けに行った時には緋織は男に首を押さえつけられ
ある男の居場所を教えろと言われていたという。
彼が聞いた言葉は"和也"と"兄貴"。
緋織の友人である彼らは
緋織から両親がいないとだけ聞かされており
兄妹の事は何も知らなかったと。
ただ、俺の所に訪ねてきた彼にだけは
ちゃんと話すから待っていて欲しい、と
緋織本人から言われたそうだ。
翔「それで、君は何て答えたの？」
北「待つ、と伝えました」
翔「でも今日俺のところに来たって事は何かあったんだ？」
北「……」
翔「もしかして自分で調べちゃった？」
北「…いえ、調べたというより知っていました」
翔「そっか」
あの頃結構世間を騒がせた一件だ。
勘の良い人なら何となくで線が繋がっても
何らおかしくはない。
俺は珈琲を一口啜ると、彼を見据えて言った。
翔「この事、誰かに言った？」
北「いえ…というか言えません。」
翔「…君、名前は？」
北「松村北斗、です」
翔「松村くんね、覚えとく」
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作者名：hiori | 作成日時：2019年10月3日 2時
