２８ 卯妙視点 ページ29
「やっほー、コタ君。今日も買いに来たよ」
「塵先生、いらっしゃいませ！
花束出来てますよ、もってきますね！」
兄さんは奥に引っ込んで花束を持ってくる。
先生ってことは…この人は兄さんの学校の教員か。
今日も。僕が店に出ていないときに来たのかな。
「初めまして。コタ君…小太郎君の弟さんかな？」
「はい、生鹿卯妙です」
「卯妙君、よろしくね。
僕は塵壮馬。小太郎君のクラスの副担任だよ」
副担任…ってことは、委員会の先生でも部活の顧問でもある人か。
兄さんからよく話を聞いている。
「あ、副担任って言って分かるかな。えっと…」
「分かりますよ。兄さんから話してもらってましたから。
兄さんがいつもお世話になってます」
「塵先生、花束です！
…あ、卯妙。何か失礼なこと言ってないよね？」
「言ってないよ。…それじゃあ、僕は失礼します」
「バイバイ、卯妙君。
…礼儀正しい子だね」
本人が聞こえる近くでそんなことは言わないほうがいいと思う。
それより…あの人、なんだか怖いな。
品定めしてるみたいな、ヒトを見るのが面白いみたいな。
「…」
チラッ、と塵さんの方を見る。
兄さんから花束を受け取って今から帰るところだった。
ふと指にきらめくものがあるのが見える。あれは…指輪？
右手の薬指。彼女がいるのかな、別に変なことではないか。
顔はいい方だと思うし、違和感はない。ファッションっていう可能性もある。
「卯妙君」
「っ！？
は、はい。何ですか？」
声をかけられた。
まじまじと見ていたわけではない。何でわざわざ…？
「帰るから挨拶しようと思って。
驚いちゃったかな？ごめん」
「だ、大丈夫です」
「そっか。
またね、卯妙君」
薄っぺらい笑顔を張り付けて手を振る。
…なんだ、あの人と同じか。
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作者名：future*show | 作者ホームページ：
作成日時：2021年8月4日 17時
