4’無花果のコンポート ページ4
松田side
窓から吹く緩い風が頬を撫でる
...いや、さっみぃよ。冬だし
『空気の入れ換えなんたら』とか言ってたAが開けっぱなしにした窓を勝手に閉めようと上半身起き上がらせた時
タイミング悪く入って来たA
キッチンを借りていいかとの申し出を許可し、大方お粥なんかでも作ってたんだろう
手にしていたお盆に乗せたお椀から白い湯気がゆらめき立つ
『あ、すみません。今閉めますね』
見かねたAがテーブルにお盆を置くと俺の斜め上に設置された窓に手を伸ばした
その合間に見える横顔、流れ落ちる長い髪から咄嗟に目を逸らす
『お粥、少しでも食べられます?』
「ん、食う」
正直言葉にするのも限界らしい俺の体だが、こいつの作ったお粥は欲するらしい。我ながら現金なやつだ
Aの手からお椀を受け取る
白い流動性の米の中に小さく刻まれた鮮やかな緑の__セロリ
『実はそのお粥、プラスで少しだけ梅昆布茶も隠し味として入れてるんです』
ドヤ顔で説明始める彼女に小さな笑みを溢す
本当、無理矢理でも体に良いもの食わせようとするのも、お節介な所も降谷と似てるな
それは言葉にせず心の中だけに留めておいた
『お味はどうですか?』
「...うまい」
鼻をすすってスプーンを口に運ぶ
最終的に生でセロリ食わそうとした降谷とは違うな
そんな事を考えながらもぐもぐさせていると、額に貼り付けた冷却シートが剥がれ落ちた
『新しいのに変えましょうか』
しっかり準備していたらしい冷却シートを持ってベッド脇に来たAに受け取ろうと手を出す
だがAは俺の差し出した手に疑問を浮かべ、渡してはくれなかった
『私が貼りますので松田さんは食べてて良いですよ?』
こちらが言葉を出す前にさらりと上げられた前髪
ひんやりとした細い指が額に当てられる感覚
「おい、」
『じっとしてて下さい』
近すぎる距離、真剣な瞳、合わない視線
熱よりも別の感情が邪魔をして赤みを帯びる顔
ぶっきらぼうに「ありがとう」と「ご馳走さま」を伝えると、良かったと笑うAに今度こそ目が離せなかった
...その日はいつの間にか寝ていた俺が目を覚ますとAの姿は無かった
変わりに置かれていた『無理は禁物ですよ!お大事に」と記されたメモ用紙を手に取る
ありがとう、と小さく呟いた
だいぶ体が楽になった気がする
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リンドウ - 月下美人さん» ここまで読んで下さりありがとうございます!何とか無事にハッピーエンドで終える事が出来ました!笑 ありがとうございました!! (2019年6月6日 7時) (レス) id: 8527558b0b (このIDを非表示/違反報告)
リンドウ - あめ、さん» ありがとうございますー!!こじれた恋愛ついに完結致しました!おコメントも励みになりました、本当にありがとうございました! (2019年6月6日 7時) (レス) id: 8527558b0b (このIDを非表示/違反報告)
月下美人(プロフ) - ハッピーエンド完結おめでとうございます&お疲れ様です!! (2019年6月6日 1時) (レス) id: 9aa06677e2 (このIDを非表示/違反報告)
あめ、(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読ませていただいてました。ついに結婚……!これからもどうかお幸せに、ですね!お疲れ様でした〜。 (2019年6月6日 1時) (レス) id: 112aeeb1e8 (このIDを非表示/違反報告)
リンドウ - コーヒー牛乳さん» 本当ですか!ありがとうございます!!この作品で降谷さんと松田さんをもっと好きになって頂けるとは...!!喜びの極みです笑 これからも更新頑張ります (2019年5月19日 7時) (レス) id: 8527558b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年4月2日 5時