Maybe.Ⅲ (ページ23)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:39,646 hit

＊ページ23

　
　翔太は目元を押さえる。声は時々掠れてしまっている。

「……患者さんが死にそうになってるのに、俺……何もできなかったし……」

「……翔太」

　俺は翔太の横に腰掛けて、彼と同じように天井を見上げる。

「上手くいかないことだって……あるよ。人間、ずっと順調に進むわけじゃないし……」

「うん……」

　彼は泣く時に、天井を見上げて目元を手で押さえる癖がある。
　きっと、彼は彼なりに反省してるし、悔やんでいる。自分の出来なさに絶望もしている。それがみんなに伝わりにくいだけで……。

「大丈夫だよ。翔太は良くやってると思うし、頑張ってるよ。俺が言うんだから、間違いないよ」

「……うん……」

　鼻が啜る音が聞こえる。

「……落ち着いたら、どっか食べに行く？」

「……俺、涼太の作るラーメンが食べたい……」

　思わず口元が緩んで笑ってしまう。そんな物で喜んでもらえるのなら、いくらでも作るよ。

「わかった」

「……あと、少しだけ肩貸してほしい」

　そう言って、俺の肩に寄りかかる。目元は手で隠されたままだ。翔太は普段、弱っている姿を人には絶対に見せない。これは幼馴染みの俺だけの特権。

「うん」

　そのことに優越感を感じる。
　
　