Maybe.Ⅲ (ページ20)

今日:1 hit、昨日:30 hit、合計:39,690 hit

＊ページ20

　
　救急病棟に着くと、思ったよりも人はいなかった。これじゃあ、人手が足りないんじゃないかな？

「あ、宮舘先生」

　前にいた先生が振り向いて、俺を呼ぶ。

「佐久間先生、お疲れ様です」

「お疲れ様です。先生も来てくださったんですね」

「はい、医師としてドクターコールが鳴ったら来るのが義務ですから」

　彼もきっとそれが理由でここに来たのだろう。佐久間先生は患者さんのことをとても思っている人だから。

「俺もそれで来たんですけど……もう、岩本先生と深澤先生がいろいろ処置をしてくださってて……」

　病室の中を見ると、深澤先生が看護師さんたちに指示を出していて、岩本先生が動脈の点滴を取っている。三宅先生もいて、点滴ボトルを高いところに持ち上げている。ボトルの中身は空っぽだ。看護師さんが急いで変えの点滴を持って来ている。

「……俺たちの出る幕はなさそうですね」

「阿部先生」

　阿部先生が俺たちの後ろから病室の中を見ている。

「お疲れ様です」

「お疲れ様。救急病棟でドクターコールとか何事って思ったけど……渡辺先生の患者さんだったんだね」

「え？」

　翔太？確かに、ベッドに掛けられている名札の担当医師の欄に渡辺翔太の名前がある。でも、彼の姿は見当たらない。
　
　