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そのまま車に乗せられて、樹の家から遠ざかって行った。窓の外の景色を見て、離れていくのが分かるから見ていたくなくてただひたすら下を向いていた。
「心配したよ」
京本くんはそう言うだけだった。何を言われても仕方ないと覚悟していたから、さっきとは違う優しい声が痛かった。
『…怒らないの？』
「怒る役目は俺じゃないからね」
その言葉に北斗の顔が浮かんだ。けれど同時に樹の顔も浮かんだ。
これから向かうであろう先に待っている事を思えば当然前者の事しか考えなければならないのに。自分が突発的な気持ちで過ごした時間は取り戻せない。
静かな車内に響くのは呼吸の音だけ。
さっき見た樹の姿が頭にこびりついて離れなかった。私がまた彼を弱くしてしまった。嬉しさよりも、申し訳なさが募るばかりで。
それでも一緒にいたかったのだと叶うはずのない絵空事を胸に灯す。
____どうか、私より幸せになりますように
そう願って目を閉じても、離れはしない。二度目の別れは面と向かってだった。だからこそこんなに離れてくれないのか。
触れていた温もりも今はもう冷え切っている。
どうしようもなく、自分の身体の一部を何処かに置いてきた様な空虚な気持ちでいっぱいになる。
よく分からない涙が頬を伝い、洋服にシミを作った。
「Aちゃん、これだけ聞いて？」
京本くんが、私に向かってゆっくりと話し出した。
「生きている限り、誰も悲しませない事なんて出来ない。誰を幸せにするのか、自分で選ぶしかない」
「今の君には一人だけでしょ？」
そう言う京本くんに全て見通されているのが何だか苦しくなった。分かっているからこそ、今の私にはとても苦しくてまるで海に放り投げられたみたいな、どんどん沈んでいく様な。
だから私は息が吸いたくて必死に足を動かした。
『……私の幸せは、誰が選んでくれるの？』
私の問いに、京本くんの口が動く事は無かった。
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絹(プロフ) - 菊池わた�擦気�» ありがとうございます（ ; ; ）書き手さんからそう言って貰えて嬉しいです〜！ (2019年12月19日 1時) (
レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
菊池わた��(プロフ) - 切なくて重くてすごい面白かったです！一気に読み終えてしまって自分でもびっくりしています。笑 私もこんな作品を書けるように頑張ります！ (2019年12月16日 15時) (レス) id: e0301e7fb0 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ささん» ご愛読ありがとうございます（ ; ; ）自分で書いていても樹のシーンは苦しい気持ちになってます、、のんびりですが頑張ります(^_^) (2019年12月8日 20時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
さ - 切なくて、何回も読み返しています。特に樹くんのターンになるといつも胸が締め付けられます。これからも更新楽しみにしています。ご自愛ください。 (2019年12月7日 22時) (レス) id: 5b9eda9a88 (このIDを非表示/違反報告)
絹(プロフ) - ぶーさん» ありがとうございます(TT) がんばります！ (2019年11月8日 22時) (レス) id: 60cdcfbbf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹
| 作成日時：2019年10月2日 5時
