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「またギリギリだな」
『、すみません』
大好きだったその瞳がいつから大嫌いになったんだろう
大好きだったその声がいつから大嫌いになったんだろう
「お前はもう松村家の一員なんだ、自覚を待ってもらわないと困る」
まだ"松村"になったわけではない、と無駄な悪態を心でつく
何度も聞いたその言葉は私を麻痺させる。
まるで猛毒、一瞬でも触れたら二度と逃れられない。
「……今すぐにその口紅をどうにかしてこい」
『……はい』
私なりの少しの抵抗も彼にとっては痛くも痒くもないのだ
口紅を乱暴に拭き取ってコーラルピンクの線を描く
赤い口紅に合わせたメイクも台無し
それでもいい、彼が私に飽きてさえくれれば。呆れてさえくれれば。
私はきっと
「あら、Aさん。顔色悪いんじゃない？」
『…お義母様、気のせいですわ』
「半年後の式までにやることがたくさんあるものね、無理はしないように」
『、ありがとうございます』
「そんな顔していたら北斗が心配するわ、大事な婚約者だもの」
『……そう、ですね』
「じゃあ、先に行っているわ」
大事な婚約者、か
歯が浮いてしまうようなそんな肩書きに私は何も魅力を感じない
コツコツと響くヒールの音に本当に具合が悪くなりそうだ
ごまかすようにチークだけ少し足して化粧室をあとにした
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「Aさん、修士論文の経過は順調かな？」
『はい、毎日新しい発見の繰り返しで興味深いです』
「あなた、食事中に学業の話なんて」
「…あぁ、すまないな(笑)気を悪くしないでくれ」
『いえ、お気になさらず』
きっと日本で指折りのシェフが作ったであろうコース料理も
私には味なんて分からない
「Aさん最近痩せたかしら。そう思わない？北斗」
「…あぁ、そうだね母さん」
「花嫁姿が待ち遠しいな」
「もうそろそろ式場を決めなくてはね」
やりたくもない式の話になる度に作り笑顔が出来ているか不安になる
言葉に詰まって愛想笑いしか出来ない
近付くその日を私は反抗する勇気も度胸もなくただただ時が流れるのを傍観者の様に見ているしかない
そんな感傷的な自分を叱ってくれるのはいつだって
「まだ決めるのは早いでしょ？」
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：絹(プロフ) - みなさん» ありがとうございます〜(/ _ ; ) 期待に応えられるようにがんばります◯ (2019年8月4日 0時) (
レス) id: c52fa03a53 (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - 何回読み直しても飽きないです^_^ (2019年8月2日 1時) (レス) id: fa95af4103 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 更新待ってました！ (2019年6月22日 16時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 更新していただきありがとうございます！ずっと待ってました！ (2019年3月7日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
さやめめ(プロフ) - 私もとてもショックを受けましたが、またこうして更新をしていただき有難いです。とても楽しみにしていました、これからも応援しています。 (2018年12月1日 15時) (レス) id: 0eff97111c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹
| 作成日時：2018年4月2日 19時
