きみのいる景色 ○Satoshi.O●

○23話● ページ23

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右の頬に、ふわっと暖かい感触。








A「えっ…？」







目の前に現れた黒い影にビックリしてると

グイって顔の向きを変えさせられて




次に視界に入ったのは

テロッて眠そうな目をした、大野さんの顔。







智「…泣いてんの？」

A「っ！」








私の頰を包む、大野さんの右手の親指が動いて

目頭の涙の跡を、そっとなぞられる。




その動きに、ビクンッて身体が跳ねて

急に全身が動かなくなる。




いつもより近い距離にあって、心配そうに私を見つめる大野さん。

全身が心臓になったみたいに、ドクンドクンと煩い。







智「どしたん？」

A「や…大丈夫です、何でもないです」

智「んだよ。言えって」

A「…仕事で、失敗しただけです…」

智「そか。何したの」

A「…色々ぶちまけたり、とか」

智「ふっはは。ぶちまけたんだ」







思い出して、またジワーッと涙が滲むから

意地でも泣いてやるもんかって、眉間にグッと力を込める。




すると、頬に触れてた手がスルッて離れて

ぽんぽんって頭に手を乗せられる。




たったそれだけなのに

大野さんに触られてるところが

熱い。





それから

…すっごく、安心する。







智「よしよし」

A「…子供じゃないです」

智「ふふ。そだね」








そう言うくせに

頭を撫でる手は止まらなくて。




それは私の心を

少しずつ少しずつ、解いていくようで。




せっかく頑張って抑えていた涙が

ポロポロッ…と次々に溢れ出す。







A「あー…も…我慢してたのにー…ｸﾞｽｯ」

智「大丈夫、泣き顔可愛いし」

A「煩いですっ…ｽﾞｽﾞｯ」








この、タラシめー…って

八つ当たりも入って、余計涙が止まんなくなる。




滲んで仕方ない視界に映った大野さんは

穏やかな表情で微笑んでいた。




いつも私ばっかり何かもらってる。

いつも私ばっかり助けてもらってる。







A「…なんか大野さん、仏みたい」

智「誰が仏じゃ」

A「ふふっ…」

智「仏って、こんな感じでしょ」

A「…それ、ウル◯ラマンです」







右腕を立てて左腕を横にしたそれは

シュワッチ！って効果音が聞こえて来そうなポーズ。





あれ？って首を傾げる大野さんが可愛らしくて

ふふふって思わず笑みをこぼしたら

大野さんも、んふふって笑い返してくれた。





あぁ…本当に

貴方にはもらってばかり。

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