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急いで駆け寄って声をかける。
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あ 「…阿部さん、大丈夫ですか？」
肩で荒く息をしてる彼。
ふと、おでこに手を当ててみるとすっごく熱い。
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きっと風邪、だ。
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こんなになるまで我慢していたなんて…
さっきまで全然気付かなかった。いや、正確には気付くことが出来なかった。
無理して、私の前では笑ってくれていたんだ。
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阿 「大、…丈夫」
ほら、また。すっごく辛そうなのに、そうやって無理して笑ってる。
阿部さん優しいから迷惑かけまい、って
きっと他の人の前でも隠そうとしてたんじゃ…
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あ 「阿部さん、立てますか？」
阿 「…ご、めん」
あ 「私の肩、遠慮なく掴まって下さい」
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阿部さんは今。きっと私に迷惑をかけたくない。
って、そう思ってると思う。
…でも、迷惑かけて欲しい。少しでも私を頼って欲しい。
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テレビの前では笑っていても
辛い時や苦しい時は私の前では弱いところを見せて欲しいんだ。
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時計の針が22時を過ぎた頃。
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阿部さんの家も知らないし、
このまま放っておくことなんかとてもじゃないけど出来なくて…
なんとか彼を私の家に連れて、ベットに横にした。
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顔も赤いし、おでこも熱い。すごく辛そう。
心配で彼の顔を覗き込んでいると、
阿部さんが閉じていた瞼をゆっくり開けて、私を見た。
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阿 「またAちゃんに迷惑かけちゃった…」
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布団をそっとかけた私に阿部さんが力なく微笑む。
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あ 「迷惑だなんて、むしろ…
タオル、持って来ますね」
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『むしろ』その続きを言いかけたところでやめた。
だって、今その続きを言ったらきっと阿部さん混乱しちゃうと思うから…
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阿 「…あり、がとう」
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阿部さんはそう言うとまた静かに目を閉じた。
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その彼を見ていて思うんだ。
やっぱりとてつもなく
どうしようもないくらい貴方が『好き』だって。
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2020年9月10日 20時
