恋セヨオトメ【黄】 (ページ30)

今日:6 hit、昨日:9 hit、合計:128,811 hit

029 ページ30

.

6月も後半戦に突入した。

ここ何日かの私はすごく調子が良くて

毎日のように自己ベストに近いタイムを
叩き出している。

『A〜、最後測る？』

｢あ、うん！｣

自分のだけどベストタイムはベストタイム。

そこの壁は高く、越えるのはなかなか厳しい。

いつもコンマ何秒の世界で戦っていた。

でもこれがこの競技の面白いところ。

記録を塗り替えた時のあのゾクゾク感がたまらない。

まぁ普段の練習じゃ
公式のタイムとは言えないんだけどね。

いつもタイムを計ってくれる
同い歳のマネージャーがこちらに手を振っている。

準備していいよ、の合図だ。

私はスターティングブロックに足をかけた。

.

『A！めっちゃいい記録出てる！』

｢えっ…はぁ……っほんとに？｣

全力で走りきり、
その余韻でそのままフラフラ歩いていると

マネージャーが駆け寄ってきた。

見せてくれたストップウォッチの数字は
前々回の大会で出したベストを上回っている。

多少の誤差があるとしても、かなりいい結果。

岩｢どうだった？｣

｢わっ！い、岩本先輩っ！｣

岩｢驚きすぎだろ。(笑)｣

私の後ろから顔を出す岩本先輩。

覗き込むような姿勢だから、
先輩の顔は私の顔のすぐ側にある。

ち、近い…

汗と混じった柔軟剤の匂いが
私の鼓動が加速させる。

岩｢いいじゃん。タイム。｣

｢えっあっ！はいっ！｣

岩｢早速有言実行だな。｣

そう言って岩本先輩は
私の髪の毛をわしゃわしゃした。

私の大好きな大好きな笑顔で。

この笑顔をずっと見ていたい。

辛い時も、嬉しい時も
どんな時でも私に幸せと元気をくれる。

どうか、誰のものにもならないで。

いや。

もういっそのこと
私だけのものになってくれないかな。

なんて、ね。