secret touch.６ ページ9
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部屋にはダブルのベッドひとつに、
テーブルといす。
しょうたをベッドの淵に座らせて、
クローゼットから着替えを引っ張りだして手渡した。
「このまま横になるの嫌でしょ。
ほしいものあるなら買ってくるから、
とりあえず着替えて、横になって」
見られていたら着替えにくいかな。
お湯でもわかそうかと、しょうたに背を向けて
備えつけのケトルや茶葉を探そうとした。
とん、
背中に何かがふれた。
「…しょうた？」
背後に感じる気配。
多分しょうたのおでこが
背中に軽く押しあたっている。
「ごめん、何か。今日、俺、」
背後から小さな声が発せられる。
「体調、悪いのに頑張ってたんでしょ。
いつもとちょっと違ったし…
早く横になって、」
「ちがう。何か…ごめん。
２人だけで、
何か、よくわかんなくなって」
体調が悪いわけではないのかな？
それならそれでよかったけど。
違和感は、本人も自覚してたんだ。
でも言語化までには至らないようで、
何とも要領を得ない。
ゆっくり後ろを振り返ると、
一歩後ずさりして、俯いているしょうた。
「しょうた？」
促して、軽く顔を覗き込むと
しょうたが少し顔が上げて、
揺れる視線にふれた。
「…っ、」
…なんつー目をしてんの？
感情が今にも溢れ出しそうな瞳は、
言外に、雄弁に、
本人すら言葉にあらわせないことを語っている。
「…今自分がどんな顔してるか
わかってないでしょ」
「わかんねぇ…どんな顔してる？」
戸惑いに揺れる瞳。
今、俺もどんな顔してるだろう
どんな風にしょうたに見えてるか、俺もわからない。
こうして２人きりになれることなんて、早々ない。
ましてや、恥ずかしいとぶっきらぼうになる
しょうたが、今日は素直。
このチャンスを、
なかったことにはしたくなくて、
目の前の幼なじみを抱きしめた。
びくっとしょうたの肩が跳ねる。
刹那、逡巡したのち、腕から逃げだそうとした。
腕に力をこめて、ぐっと体重をかけ
ふたりでベッドに倒れ込むと、
しょうたは抵抗し始めた。
ここまでが冒頭までのいきさつ。
もがいていたしょうただけど、
毅然とした俺の態度に、
少しずつ体のこわばりが緩んでいた。
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作者名：ほたて | 作成日時：2023年1月4日 20時
