想像を超えていけ。１※ ページ11
⁂
自分の知らない涼太がいるのが嫌。
自覚したのは、いつだったか。
思い返すと無自覚に、
気持ちを垂れ流していた気がする。
俺がいちばん、知ってるんだって。
「ん、っ…」
啄むように唇を合わせていたけれど
舌でくすぐられて、吐息がもれた。
ふっくらした唇は、
見ていた印象の通りやわらかくて、
きもちいい。
「…っふ、」
主導権を握られている。
本来なら、あまり嬉しくはない。
勝ち負けじゃないのは分かってんだけどさ、
男として、ちょっと悔しいじゃん？
涼太に負けず劣らず、俺も負けず嫌いだし。
かと言って、涼太と俺って考えたときに
涼太には勝てないなって思う。
何なら涼太になら負けてもいいし、
そもそも、男相手に
どうやったらいいかわかんねぇ。
…ぶっちゃけ、これが一番本音かも。
「…、んっ」
大きくてしなやかな掌が、
顔を包み込んで
舌がくちびるを割って入ってくる。
生温かく濡れた感触に、
掌が耳を覆っているせいで、
やけに唾液の水音が、響いて聞こえる。
うっわ、えちえちじゃん。
越えなければ、知ることができなかった。
例えばどんな風にコトをすすめるのか。
まだ無自覚な若かったころ。
今振り返ると最低だし、自分ながらヒクけど…
涼太に近づいていた女の子に近づき誘ったことがある。
俺の知らない顔を垣間見たくて。
でも、涼太はそんな軽いわけがなく。
簡単に俺の誘いに乗るような女の子の誘いには
当然ながら乗っていなかったから、
俺の思惑は遂げられることはなく、
ただただ面倒なことになっただけだった。
あの頃、俺は自分でも分からない感情で、
いつも簡単に不機嫌だった。
今になれば、涼太について知らないことが
あることが不愉快だったとわかる。
そう例えば、こういう時に、
どんな顔するのか
どんな言葉を囁くのか
「…っ！」
「余裕だね」
そっと目を開いて、顔を窺おうとしたら
ばっちり目があった。
びっくりして、思わず体を引いて離れる。
えっ、キスする時目開けてる系！？
あ、でも、涼太っぽいっちゃ、ぽい…！？
「いつも開けてるわけじゃないよ」
考えがダダ漏れだったのか、
声に出していないのに涼太が答える。
「しょうたと同じ。
聞きたかったし、見たかった」
⁂
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 432人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほたて | 作成日時：2023年1月4日 20時
