真夏の原動力。２ ページ2
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ごく、と
喉仏が上下に動く。
首筋のライン、相変わらずきれいだな。
「…よかったじゃん？おめでとう、」
その横顔にそう声をかけると、
思ったより掠れた声が出た。
涼太がペットボトルをおろして
こちらをまっすぐ見すえる。
今日初めて、
目が合う。
「ありがとう」
細められた目、弧を描く唇。
なんて、うれしそうな顔。
時代劇とかしたいって言ってたもんな。
和装とか、馬に乗ったりとか、
似合うと思うし、合ってると思う。
アイドルって仕事をしていながら
俺は自分のこと、分かってるつもりで
よくわかってないことを
気づかされることがある。
ブランディングっていうの？
考えてないわけじゃないけど、
メンバーから引き出してもらうことも、しばしば。
一方、涼太は自分をよくわかってる。
キャラとかじゃない、どれも本当。
だから、ブレない。
いつも地に足がついてて、
背中はぴんとのびて、
まっすぐ前だけを見てる。
昔から、今まで変わらず。
そんな涼太がいるだけで、俺はー…
「おれも、がんばるわ」
視線をまた膝に落としながら、つぶやいた。
涼太がブレずに、そこにいてくれるから
安心できるっていうか、
涼太に顔向けできるくらい
頑張らなきゃって思う。
俺にとっての、涼太ってそんな感じ。
「しょうたは充分、頑張ってると思うけど」
当たり前のようにつぶやく涼太。
掠れたのどが急に気になって
んん、とのどを鳴らすと、
何だか照れてるのを
誤魔化してるみたいになった。
実際すこし、耳があつい。
それを誤魔化すように、
早口に言葉を紡いだ。
「いや、目黒とかさ、すごいじゃん。
ドラマに映画に、俺たちとの仕事。
ちゃんと休めてんの？って感じだし。
阿部も合間に勉強してるし、照だって、」
「まあ、みんなそれぞれ頑張ってる。
比べることじゃなく、
俺から見たら同じだよ」
涼太は、思ってないことは言わない。
仕事の場でいうと笑わそうとか、
今でいうと励まそうとか、
そういう意図が本当にない。
ただ思ったことをぽんっと言うだけ。
それが俺にとって…何か、刺さる。
「うん、まあ、それはそうかも」
俺も、ありがたいことに
いろいろなお仕事をさせていただいている。
与えられたチャンスひとつひとつ、
丁寧に向き合っていけばいいのかな。
ペットボトルを仰げば、
冷たい液体が
熱いのどをすべり落ちていった。
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作者名：ほたて | 作成日時：2023年1月4日 20時
