僕の彼女になってよ。 (ページ28)

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Aさんが鬼のようなスケジュールをこなしているのは、知ってる。
玉森くんとの映画の公開日がもうすぐだから、恋愛映画の世界観やイメージを大事にしてるのと
企業やスポンサーの心象も悪くならないようにスキャンダルは御法度。
事務所から強く言われること。
玉森くんに限ったことじゃなくて、他のうちのタレントの誰かだとしても毎回恒例の厳戒態勢。

会ってる時もずっと見てられるし、好きだってずっと思ってるし。1日に何回可愛いって思えば気が済むんだ、てくらいだけど。
会わない時間が余計に想いを募らせる。

…康二が来た日。思わず気持ちが溢れたから伝えようと思った。でも、酒に強いとは言えアルコール入ってたし。
素面の時にちゃんと伝える、て決めてたから。

俺なりにめっちゃ考えたけど、やっぱり我慢とか駆け引きは性に合わない。
だから、10分だけでもやっぱり会いたいしちゃんと伝えたかった。

テッペン超えるのは分かってたけど、賭けてみることにした。
そしたら、割とすぐAさんが帰って来て。
…やっぱり可愛い。俺の胸を高鳴らすには十分過ぎるくらい。

「お邪魔します」

『…ごめんね、待たせた？』

「いいの、俺マジで一瞬でも会いたかっただけだから」

『事務所に怒られない？』

「大丈夫、何とかする」

『…うん。蓮、私ね。会いたかった』

「…マジで？」

『…本当に。だから来てくれて嬉しい』

「…全く、もう。困ったお姉さんだな」

抱き締めたいけど、そしたらキスしたくなっちゃうし。
唇が触れる前に伝えたかった。

「Aさん」

『うん？』

…前言撤回。
キッチンでコーヒーをミルで挽いてるAさんを見たら、疲れてる筈なのに俺の為にって思ったらやっぱ愛おしくなって後ろから抱き締めた。

「Aさん。好きです、付き合ってくれませんか」