04 皇帝サマと、グルメ旅【野坂悠馬】 ページ8
今こうして私の前で、スマホを弄りながら器用にクレープを頬張るこの人は、私の恋人の野坂悠馬。
同じ年の数生きているはずなのに、この人の食に関する経験値は半端ではない。
そんな彼のことを世間は"グルメ通"と称すだろう。
今日も、Aの学校、テスト期間だからどうせ暇だよね?と矛盾じみた理由のもと、彼に連れられてこのお店で、悠馬おすすめのキャラメルなんとかクレープを堪能している。
「んー、やっぱりここのクレープは格別だね。本当、来れてよかったよ」
「悠馬は美味しいところたくさん知ってるよね。このクレープ、冗談抜きで今まで食べたクレープの中で断トツだもん」
「そう、それは良かった。僕、それ食べたこと無かったから前から気になってて。1口くれる?」
「....ちょっと待て?」
人目を構わず、ぐいと私のクレープへと近づく悠馬の顔面を軽く押し退けて、頭の上で浮かんでる大量の疑問符を一つ一つ取り除く。
「このクレープ、悠馬おすすめと言いましたね?」
「さあ、何のこと?」
とぼけおって。
でも、スプーン一口大に乗せた私の分のクレープを悠馬に食べさせたら、さほど表情が変わることなく、でも美味しいねと一言。
そして、餌を欲しがる雛鳥のように、またパクパクとしてたからもう一口だけサービス。
今度は、にこっと微笑んでくれた。
そんな悠馬の一つ一つの仕草に胸が高鳴る。
普段、戦術の皇帝だなんて呼ばれて、部ではサッカー部のキャプテン、学校では生徒会長、クラス委員長、面倒な役割まで、全部受け持っちゃって、
周りにはクールに振る舞う悠馬だからこそ、こういった子どものような一面が見られると、私は彼女として、優越感に浸ることができる
「A、僕のもいる?」
「いっ、いる!」
悠馬が食べてるのは、大きなバニラアイスがどんと飾られてあって、そこにホイップと苺が均一に盛られているクレープだ。
さっき私が悠馬にしたように、悠馬は私にあーんと1口、器用に口までクレープを運んだ。
わ.......!
「美味しい!」
「ね、美味しい」
「こんなに美味しいものを大好きな人と一緒に食べられて私、最高に幸せだよ」
「.......ごめん」
「えっ!?悠馬!?」
そのまま彼は立ち上がったと思うと、
私の額に一つ、キスを落とした。
「ごめん、A。幸せなのは、僕の方だよ」
ジュース、取ってくるね。
Aはどうせココアでしょ?
そう一言だけ告げて、彼は飲み物を取りに行った。
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Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました!← (2019年3月28日 21時) (レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)! (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます!話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど、不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね!(;_;)とても嬉しいです!これからも頑張ります!ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 | 作成日時:2019年3月4日 8時