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「試合、出れそう?」
言った矢先、自分の発言に酷く後悔した。
困ったように無理して微笑んでいた修也の表情に、確実に影が差し込んだからだ。
「アジア予選が終わるまで、復帰できないだろうな」
残酷な現実を自身の言葉にしているのにも関わらず、彼はやっぱり笑って、私に向き合った。
誰よりも辛いはずなのに、泣きたいはずなのに。
私の前では、弱い所を見せるわけにはいかない。
そう言われているような気がした。
私は、そんな修也の姿を見ていたくなかった。
私の前では、無理をしないでほしい。
泣きたい時は泣いていいよ、って。
そんな悲しさを隠し通そうとする彼の手を、悲しみごと包んであげるように、両手でぎゅっと握った。
「……修也。無理、しないで」
あんなに病室の前で、悶々と言葉を並べては崩してを繰り返していたのに。
彼を思うと、自分でも驚く程に自然と言葉が出てくる。
「私は修也じゃないから、修也の気持ちの1から10の全てを汲み取ってあげられない。…けど、1でも2でも、私は私なりに修也の気持ちを分かってあげたいの」
強くて勇ましくて、頼りがいのある修也が好きだった。
何をするにも卒のない彼の隙に、私は入れないとばかり思っていた。
でも、こうして
目を見て、手を握って、
「修也が好きだよ」
って伝えられるのは、
彼の強いところも弱いところも全部、受け止めてあげたいって切に思えるからだと気づいた。
彼は観念したかのように、息をつくと、
「俺も、Aが好きだ」
やっぱりAには敵わないなと、いつもの笑顔で私に笑いかけた。
修也は私の頬を両手で優しく包むと、それを合図とみなして私は静かに目を瞑った。
そして、自然と唇が重なる。
甘くて溶けそうな好きに紛い、涙のしょっぱい味がした。
▽
リクエストありがとうございましたっ
18ー1 Sweet has come【野坂悠馬】→←17ー1 最終兵器の強がり【豪炎寺修也】
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Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました!← (2019年3月28日 21時) (レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)! (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます!話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど、不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね!(;_;)とても嬉しいです!これからも頑張ります!ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 | 作成日時:2019年3月4日 8時