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「…つまり、泣いてた時にハンカチを差し出してくれた奴がたまたま野坂だったと?」
「そう、だね」
Aのその場面に居合わせていたのがもしも俺だったなら、彼女は俺に対して、そんな表情を浮かべてくれていたのだろうか。
そもそも俺は、わざわざ泣いている知り合いでもない赤の他人にハンカチを差し出して慰められるほど、お人好しではないし、第一そんなキャラでもない。
そして俺は、そんなAのタイプとは程遠い。
賢くもないし、
チームの指揮なんて執らないし、
リーダー的存在?そんなものとは真反対だ。
仮に野坂が日向の人間だと称すのなら、俺は日陰の人間で、チームの隅でのうのうと居座っている奴だ。
大して面白くもなさそうな試合は今まで出なかったし、出場する気分にもならなかった。
だからこそ、星章イレブンの中では浮いた存在だった。
「灰崎くんは、優しいんだね」
「…あ?」
「わざわざ初対面の私にハンカチ届けてくれて」
「そんなの、誰でもするだろ」
「ううん、灰崎くんみたいな優しい人じゃないとそんなことしないよ」
普通だったら見て見ぬふり、そうでしょ?
と彼女は笑う。
彼女は、俺のどこまでを知った気になっているのか。
……Aだから、そうした。
彼女と話すきっかけになりうるから、そうした。
だなんて言えるものなら、どんなにスッキリするだろう。
ふと、彼女に俺の事をもっと知ってほしいだなんて自分らしくもない気持ちが湧き上がった。
ハンカチ、渡さなきゃ良かっただなんて嫌な気持ちはいつの間にか奥へ奥へと押し込まれていって、代わりにもっと彼女と話したい、といった純粋な気持ちが出てきた。
「今度、星章と雷門の試合がある」
「…うん?…うん、知ってるよ」
「ちゃんと観とけ」
Aは、俺の言うことをよく分かっていなさそうだ。
でも、特に付け足す気にはならなかった。
彼女に格好悪いところは見せられない。
俺らしく、俺のまま。
これから彼女との距離を詰めていく。
そう、心に決めた。
▽
フィールドの悪魔の、恋の始まり。
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Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました!← (2019年3月28日 21時) (レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)! (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます!話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど、不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね!(;_;)とても嬉しいです!これからも頑張ります!ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 | 作成日時:2019年3月4日 8時