01ｰ2 ページ2
「ねえAさん、これが、好きっていう感情？」
「.......私に聞く？それ」
自分が好意を寄せてる相手に聞くかな？そういうこと。
サッカー界においては戦術の皇帝だなんて一丁前の二つ名がついてるくらいだから、もっと手の届かないような抜かりのない完璧な人なんだとばかり思っていたけれど、
「ははっ、そうだね。ダメだったかな」
……こうも穴の空いた部分をたまに見せられると少し狂わされてしまうし、対応に困る。
でも、そんなところが良いんだろうな。きっと。
「野坂くんのおかげで、読書に集中できないんだけど」
「.......おかげ、ね」
野坂くんはくすくすと上品に笑って、言葉を続ける。
「そうか、僕がここに居座ることに君はそこまで嫌気を差していないということだね」
「.......うん、嫌じゃないよ。だから、これからも毎日朝練サボって」
そして、野坂くんのこと、もっと教えて。
悔しさを覚えた私は、そんな野坂くんに対抗したかった。
野坂くんみたいに上手く言葉を紡ぐことが出来なかったけれど、不器用な私なりの本心。
「………」
ふと彼の方に目をやると、さっきまでの私と同じ表情を浮かべていた。
その後、すぐにいつもの涼しい顔に戻っては、
「毎日サボるのは、厳しいかな」
と、やっぱり笑った。
「でも、朝じゃなくてもいい。休憩時間でも、放課後でも、僕に空いた時間がある限りAと一緒にいたい。いさせてほしい」
「.......うん」
「そしたら、Aさんも僕のこと好きになるよ」
「言い切っちゃうんだ？」
「僕の戦術に狂いはないはずだよ」
ふふんと野坂くんは鼻を鳴らす。
「うん、私のことを落とそうものなら覚悟しとく」
.......多分それも時間の問題かな。
だってもう芽生えかけているそれに、私は薄々気がついている。
私もいつか、もっとこの気持ちが大きくなったその時には、野坂くんのように好きを伝えられるのだろうか。
「待ってるよ」
彼は私の心を見透かしたように一言告げる。
この人には、敵わなそうだ。
ふぅ、と一息ついて本を閉じる。
そして野坂くんの目を真っ直ぐ見て、
にこーっと不器用な笑顔を貼り付けて、
「待っててね」
私のこの気持ちにはっきりとした名前が付けられるまで。
初めまして、私の小さな恋心。
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Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました！← (2019年3月28日 21時) (
レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)！ (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます！話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど､不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね！(；＿；)とても嬉しいです！これからも頑張ります！ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼方 | 作成日時：2019年3月4日 8時
