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スタジオのスタッフさん、雑誌のライターさんにご挨拶をすませ、阿部さんをヘアメイクに送り出せばもう当分私のやることはない。樺さんたちならスケジュール調整とかいろいろあるんだろうけど、私にはまだそこまで教えて貰っていない。教えて貰ってもまだ出来る気がしないけど。
なので。自分の鞄から１冊のノートを取り出す。これは私の自己満ノート。気になったことを調べて、書き出す。
さっき阿部さんと話しているとき、ふと疑問に思ったことがあったんだよね。今はスマホでしか調べられないけど、情報を集めてノートにアウトプット。これがストレス発散になるんだから、わたしも大概変な人間だな、と思う。
阿「何書いてるんですか？」
頭上から、声。
顔を上げると、メイクもヘアメイクも終わった阿部さんの顔。おお、一割増かっこいい。
阿「それ、なに？」
A「あ…いえこんなの自己満で、見せられるものでは」
阿「PCR検査と抗原検査の検査方法の違い…？面白そう。見せてください」
A「あっ…」
スッと取られてしまう。高いところにやられては、わたしはもう取り返す術がない。どんなに頑張っても無理なのは30年チビとして生きてきたからわかっているから、もう悪あがきはしない。
パラパラ…とノートを遡る阿部さんの顔は、さっきみたいにキラキラしだして。なんならメイクしてるから、さっきよりキラキラしていて。こりゃファンも惚れるよなぁ、と思う。
阿「なんですかこのノート、めちゃくちゃいい…！飛行船のしくみ、弾頭ミサイルの構造…そういえば知らないなっていう事ばっかり。知識の宝庫じゃないですか！」
A「いやそんな…ただテレビとかみてて、これなんだろ？って思ったことを調べただけの、完全な自己満ノートでして…」
阿「そういうのが大事なんです！えっこれ…貸してください」
貸す！？むりむり！
A「だめですよ！！そんな、恥ずかしいし、貸してしまったら次何にアウトプットすればいいのか…」
阿「そっか、そうですよね、そしたらこの撮影おわってから次の撮影までの間だけでいいです、隙間時間に読ませてください！」
A「えぇー…」
阿「お願いします！」
A「まぁ…いいですが…」
阿「約束しましたよ！巻きで終わらせますから！！」
そう宣言したキラキラ阿部さんは…宣言通りキラッキラの表情でカメラマンさんを魅了し。無駄のないインタビューで本当に巻きで終わらせた…執念がすごい…
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作者名：まめ
| 作成日時：2022年10月22日 14時
