その先へ～I'd like to approach～ (ページ16)

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プライベートの飲み会だからこそページ16

『ゴメン、遅くなった』

背中越しに
聞き覚えのある優しい声がした。

「櫻井本部長！？」

まさか天音先輩が呼んだのって
櫻井さんだったの！？

隣に座っていた天音先輩がそっと

〔(Aちゃん、櫻井のこと好きでしょ？)〕

って耳打ちしてきて

“隠してるつもりだった？今日は楽しも♪”

なんて、ウィンクしながらビールを流し込んでる…

やっぱり、天音先輩はすごい…
私、一度も櫻井さんの事は話してなかったのに
隠し事できないな…
いつから気づいてたんだろう…

『咲坂？どうした？お酒弱いの？顔、真っ赤だよ？』

「あ、いや、ちょっと考え事してて、櫻井本部長は何飲みますか？ビールでいいですか？」

『咲坂、今日は完全プライベートだしさ、“本部長”呼びはやめよう(笑) ね？』

「そうだよ、咲坂。“さん”付けで呼んじゃいなよ、ねっ翔さん？」

『お前は、もうちょっと敬え！(笑)』

二宮はいつから下の名前で
呼ぶような仲になったのかな？

〔櫻井と二宮君も仲いいよね～〕

『まぁな、できる後輩は可愛がらなきゃな～』

「翔さんにそんな可愛がられてる実感ない」

〔ふーん、まぁどうでもいいけど。みんな揃ったから乾杯しよ！〕

天音先輩はそこまで掘り下げる事なく
グラスを傾けた。

二宮の方をチラッと見ると
“ククｯ”っと片方の頬を上げて笑ってる。

いつから、下の名前で呼ぶような関係になったの？
何か隠してる顔だな…あれは。

でもまぁ、いいや。
天音先輩も、あぁ言ってくれた事だし
今日は楽しもう！

＿＿飲み始めてから約2時間。

〔Aちゃ～ん、いっぱい飲んでる～？櫻井、グラス空っぽじゃ～ん〕

「くふふっ。中里さんって、お酒入るとこんな感じになるんっすね～」

忘れてた…天音先輩、お酒入ると
普段の“しっかり者はどこ行った？”ってくらい
ふにゃふにゃになるんだった…

二宮はこれでもかってぐらい
ガン見して、好き好き光線だしてるのに、
先輩は全然気づいてない…

頑張れ二宮…(笑)

そんな二人を横目に唐揚げを頬張る。
「(ふふん、ここの唐揚げ美味しいな)」

視線を感じて顔をあげると

櫻井さんと目が合った。

『咲坂って、美味しそうに食べるよね。唐揚げ、そんなに好き？』

“好き？”

完全オフの
お酒でちょっと掠れた声

私の事を“好き”って言ったわけじゃないのに
胸の奥がキュンとなる。