そばにいてね。【2】 (ページ12)

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でも、すぐに沈黙がやってきた。

「ねーラウ？」

「ん？」

「収録よく頑張ったね」

「ありがとう、でも急にどうしたの」

少し笑いながら返せば、阿部ちゃんは表情を変えないまままた口を開く。

「具合悪かったんじゃないかなって思ってね」

「……できてなかった？」

「ううん、完璧すぎるくらいできてたよ。だからさ、つらいの、俺にちょっと分けてくれないかな？」

阿部ちゃんの纏う雰囲気にものすごく安心してしまった。

「1週間くらい、夜になると微熱出るのが続いててね。多分、今日もあるんだけど」

「それはしんどいね……首、触ってもいい？」

首筋に遠慮がちに触れた手はどちらかといえば冷たい方だと思う。体温の確認をしたその手はゆっくりと離れていった。

「ちょっと熱いかな。微熱、っていうか熱ありそうだけど……」

「なんとなくそんな気はしてた」

「病み上がりでもスケジュール詰め詰めで疲れ溜まっちゃってるのかな。頑張って偉いねラウ」

「……ん、」

「こっちおいで？」

視界が霞むと、阿部ちゃんが両手を広げてくれる。胸元あたりに顔を埋めれば意外と大きな手が頭を撫でてくれた。

別に誰かに認めてもらったり褒めてもらうために仕事をしているわけではないけれど。今だけは、気づいてくれて、頑張りを認めてくれたのが嬉しくて。

「……っ、しんどかった…」

優しい温もりのおかげか、張り詰めていたものがプツッと切れてしまった。シャツに涙のシミができても、阿部ちゃんは何も言わずに頭や背中を撫でてくれる。それで、余計に涙が出てくる。阿部ちゃんのおかげで自分自身に抱いていた嫌悪感のようなものも、涙と一緒に流れていくような気がした。

顔を上げるのは、もう少し後になりそうだ。