第35夜 ページ35
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一瞬、何をされているのか理解できずにいた。
しかし、次に来る激痛、そして血管に歯が食い込む感覚を感じ取り、嫌でも自分の身に起こっていることを実感する。
｢……っ、い゛、った……！志麻、なに、して……｣
ほとんど力が入らないもう片方の手で押し返そうとするが、抵抗にすらならない。
むしろ、私の声すら届いているのか怪しいほうだ。
痛みから思考がぼんやりとしてくる。
まずい、このままじゃ出血多量か、ショックで意識を手放してしまうのもそう遠くはない。
その前になんとかしないといけないのに、解決策は全く思い浮かばない。
｢_____っ、志麻くん、目の前の子が誰か分かってて食っとるんですか！？｣
｢センラー、今何言っても多分まーしぃには届かないよ、だって、久々のご飯なんだから｣
周りの様子はというと様々だ。
焦るセンラさん、傍観する坂田さん、たしなめるうらたぬきさん、そして、容赦なく捕食する志麻。
｢……志麻、志麻。私だよ、Aだよ、ねぇ、こっち、見てよ｣
私が志麻へかけた言葉は、状況もあってか驚くほど弱々しい。
それでも、そんな消え入りそうな私の声は、彼の耳に届いたんだろう。
彼が不意に顔を上げ、視線がぶつかる。
志麻が私のことを認識した瞬間に、その目からぽろぽろの涙が零れ落ちてきた。
みるみるうちに彼の表情は焦りへと変わる。
私はそんな1連の動作を見ながらも、意識が遠のいていくのが分かる。
もうその場に立っているのも限界で、倒れ込んでしまった。
志麻は、そんな私の元に駆け寄ってきて顔を覗き込む。
無抵抗で涙を流すその姿は、まるで少年のようにも見えた。
｢ごめん、ごめんな、痛かったよな、俺、お前にひどいことしかしてへん｣
｢し、ま………？｣
｢好きなのに、ずっとずっと心配かけてて、挙句の果てには、こんな痛い思いさせて｣
ぽたり、と志麻から流れた涙が私の頬に落ちる。
私に縋り付くように、感情を露わにする志麻は、船内で見てきた志麻とは違った。
まるで、それより前の、志麻のような_____
｢1年間ずっと、俺はAのこと待たせてたんやな｣
その言葉に何か返す間もなく私の体は限界を迎え、そのまま意識を失った。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
