第19夜 ページ19
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さて、これからどうしようか。
志麻はどこかへ行ってしまった。
倉庫の方はしばらくは近付けそうにない。
……と、なると、することがなくなってしまう。
次の目的を探そうと思った瞬間、後ろから明るい声が聞こえた。
｢Aちゃーんっ！今暇？暇やんな、ちょっとこっち来て！｣
子犬のように走ってきた坂田さんはその勢いのまま私を引っ張り、坂田さんの部屋まで連れてこられる。
相変わらず台風みたいだ、なんて思いながら特に断る理由もないので抵抗せずについて行く。
…そういえば、坂田さんの部屋に入るのは始めてだ。
1歩足を踏み入れた私の視界に広がるのは本、本、本。
壁一面の本棚にぎっしりと本が詰め込まれ、入り切らないものは床に置いてある。
他にも怪しげな色をした液体が入ったフラスコや、唯一の光源であろうランプがところどころに掛かっていた。
｢適当に座って！今お茶出すから！｣
座って、と言われても床が見えるところなんてほんの少ししかないのだけれど。
とりあえず空いている場所に座り、ティーカップにお茶を注ぐ坂田さんの背中を見つめる。
数分もかからずカップを両手に持ってきた坂田さんは私の近くに座り、1つを手渡してくる。
匂いからして多分、普通の紅茶だろうと安心しながら受け取り、1口口に含んでみた。
……大丈夫、なはず。
｢で、どうしたんですか？｣
｢まーしぃのことについて、知りたいやろ？まーしぃの意識を今の体に移したのは俺やし、俺が1番詳しいから答えられる範囲で答えようかなって！｣
にっ、と笑う坂田さんからは、最初に出会った時のような悪意は感じられない。
……いや、見かけに騙されちゃダメなんだけど。
それでもその提案はすごくありがたい。
まさか本人から話を聞けるとは思ってもいなかった。
｢じゃあ……、志麻の記憶って、消したんですか？｣
｢消してへんよ、それ誰から聞いたん？｣
きょとん、と目を丸くする坂田さんにセンサさんです、と答える。
するとあー、と眉を下げ、少し考え込む仕草を見せた。
｢消した、っていうか、せやなあ……わかりやすく言うと心のふかーいところに押し込んで、フタをしたって感じ？せやから厳密に言うと消えてへん、というか消えてたら思い出すも何もないやろ？｣
そう言われようやく今の志麻の状態を把握する。
………記憶、消えてなかったんだ。
取り戻せるかも、しれないんだ。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
