第12夜 ページ12
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不意に目が覚める。
ここには朝とか夜だとか、そういった概念がないのか、窓の外はいつだって暗い。
しかしスマホを確認すれば朝の9時と記されているため、太陽に照らされることがなかったので、朝、夜を定めようとしなかったんだろう。
しっかりと休めず、まだ重い体をなんとか上げて食料庫へ向かう。
適当に野菜やパンを取り、サンドイッチでも作ろうか、なんて考えながらキッチンの方に移動した。
｢_____あ、その前に顔洗わなきゃ｣
まだうろ覚えなため不安な足取りになりつつも、洗面所へと向かっていく。
起きている人は誰もいないのか、船内に人の気配は一切なかった。
どこから出ているのかは分からないが、冷たい水で顔を洗う。
…………早起きする人がいないということは、早い時間帯ならこの船を探し回れるんじゃないか？
鮮明になった頭の中でふとそんな事を考える。
志麻に関すること、拐われて、『食料』として扱われている人がどこにいるのか、知っておいても得はないかもしれないが、損もないだろう。
朝食を食べたら歩き回ってみよう、と今後の目的を決めたところで調理に取りかかる。
ラップなりなんなりに包めば歩きながらでも食べられるし、そうしてみようか。
｢へー、それが人間の食いもんなん？｣
｢っわ、誰、……って志麻か、びっくりさせないでよ｣
後ろから突然声が聞こえ、露骨に驚いてしまう。
ここの人はどうしてどうもこうも気配を消すのが上手いのか。
驚いた拍子で包丁で指の腹を少し切ってしまったらしく、つ、と赤い血が垂れる。
指先から感じる痛みに顔を歪めれば、志麻は不思議そうにこちらを覗き込んできた。
｢どうしたん、ぶっさいくな顔して｣
｢ほんと容赦ない、……驚いて切っちゃっただけ、軽くだから平気だけど危ないから次からはやめてね？｣
怪我した指先を見せる。
すると、志麻の顔つきが変わった。
…………あ、まずい、この人、いつもは人食べてるんだっけ。
肉を食べる、ということは、血も当然飲むのだろうか、いや、飲むに違いない。
だって、今の志麻の顔、餌を見つけた獣のように目をぎらぎらとさせているんだから。
｢は、は………やば、なんやこれ｣
目の前の志麻がごくりと唾を飲み込む。
何かに戸惑いながらも、目の前のものに興奮しているのか、荒くなる呼吸を隠せていない。
｢めっちゃ美味そう、食って、ええよな｣
こちらを見る目は、完全に捕食者の目だった。
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クロナ - 涙目になりながら読ませて頂きました。とても面白い話でした！ (2019年1月23日 0時) (
レス) id: 95383b2889 (このIDを非表示/違反報告)
心愛 - とてもよっかたです！夢主ちゃんと四人が再会するお話とかその後話が欲しいです！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - ゆづきさん» コメントありがとうございます、まだまだ拙い文ですがそう言っていただけて感無量です…！閲覧ありがとうございました！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - つぼみさん» コメントありがとうございます、少しでも作品の雰囲気を楽しんでいただけでとても嬉しいです！期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月31日 7時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - 感動した。ただその一言です！愛が感じられるとても素敵な作品でした！ (2018年10月30日 18時) (レス) id: 5ea47c424e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：史緒 | 作成日時：2018年10月3日 23時
