よく食べよく眠り6 ページ36
オスマンの手を握った私の手の甲に、ぱた、と温い水が降る。
「……なさ……ごめんなさい……ごめんなさいっ……！」
膝から崩れてうずくまりそうなのを引っ張って、腕の中に収める。
「……私こそすまなかったね。次はもっと考えて話すよ」
愛していると、何度でも言うと決めた。でも伝え方は考えなくてはいけないな、とそれだけを思った。
話がまとまったタイミングで扉の陰からアガタが燭台を手にしてすっと現れた。私の執務室までオスマンを案内したのはやはり彼女だったらしい。
ありがとう、と唇だけで言うと彼女はもったいぶって会釈し、オスマンの背中を見て少し微笑んだ。
「……さて、立てるかい？ なんなら私が抱えて行ってもいいのだけど」
柔らかなからかいを混ぜて口を開くと、ふふ、と笑ってオスマンはゆっくりと立ち上がった。
「そうか、残念だ」
汗で額に張り付いた前髪を払ってやる。
「じゃあ行こうか。ショッピと同じく客室を宛てがったんだね？」
「ええ。ついていらっしゃるんですか」
「うん。みんなの名前を訊き損ねたと思ってね」
本当は食事の前に自己紹介の時間を設けるつもりだったが、オスマンの件で失念したまま退室してしまった。
「名札は早いうちに作っておきたいからなぁ」
「そうですね」
「名札って、アガタさんや他の皆さんが首にかけているそれですか？」
オスマンがアガタの首元を見上げながら言う。
「そう。普段はつけてないんだけど、この屋敷に新人が入ってきた時はこうするんですよ。顔と名前を一致させるのにちょうどいいから」
名前を書き留めるための紙切れと鉛筆を廊下に持ち出す。
「本当は字を彫って溝に墨を入れるのが一番いいんだけど、それだと時間がかかるしね……今回は直接木札に書き込むことになるかな」
「へぇー……」
「ちゃんとした作りのものはまた今度だね。普段から身につけられるものにしようと思うから、何にしたいか考えておくといい」
「ありがとうございます」
「いいさ。うちの子になるんだから迷子札は必要だろう」
「！ はいっ」
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咲季 - 1000票目頂きました…！面白かったです。続編も読ませていただきました！！ (2022年1月10日 19時) (
レス) @page1 id: 96347ca1af (このIDを非表示/違反報告)
ﾅﾐｦの家のあろさうるす - オークションパロってはじめて見たんですが、とっても素晴らしいです！更新待ってます！マンちゃんがかわいくて尊さに耐えきれず死にそうになりました！ (2020年4月4日 19時) (レス) id: 2e27670cb5 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - bhさん» ありがとうございます！ 続編出来ました！ まだお待ちいただけてるでしょうか……？ 良かったら読んでくださいね！ (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
吉野あまみず(プロフ) - キャラメル中毒者さん» コメントありがとうございます！ 続編投稿致しました！ 楽しんでいただければ幸いです！ (2020年3月7日 7時) (レス) id: dec961c083 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、気長に更新待ってます、応援してます。 (2019年12月24日 12時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吉野あまみず | 作成日時：2019年8月22日 6時
