ふぇいくかっぷる。《Ryohei.A》 (ページ10)

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表向きは優しい彼の裏の顔を見てしまった。

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私を見つめるその顔は、すごく妖艶で。

なんだったんだ…？昨日のあの妙な色っぽさは…？

やっぱりあれは阿部さんであって阿部さんではないのかなあ。

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現実なのか、はたまた幻想なのか…

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あ「あぁ、わっかんないよ…」

宮「何が分かんないの？」

ふと、ポンと肩に置かれた手。おはよ、って宮舘さんが笑う。

ヤバい。私、声に出てたんだ…

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あ「おはようございますっ！何でもないん、です！」

宮「そう言われると逆に気になるんだけど」

部署の部屋の前で入館証をかざして、ふたりして中へと入った。

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宮「おはよう」

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宮舘さんの言葉に部署の皆さんもおはよう、と続ける。

彼の声がしっかりなされてるからかなぁ…

その佇まいはまるで貴族のようで少し可笑しい。

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そんなことに気を取られてるのも束の間。

完全に油断してた。すっかり忘れていた。

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阿「おはよ、Aちゃん」

あ「あ、阿部さん？！おはようござ、います…」

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脳裏にチラつくのはそりゃあ昨日の妖艶で、まるで別人な彼。

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宮「おはようで普通そんな驚く？」

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傍にいた宮舘さんが腹を抱えて笑う。

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阿「ふは、ほんとだよね。Aちゃんってばオーバーすぎ」

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戸惑う私のおでこを指でツン、ってする。

今、私の目の前に居るのは優しい笑顔の初めて会った日とおんなじ阿部さん。

ということは、昨日私が見た人って誰…？

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あ「すみ、ません…？」

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頭がますます混乱して、それはもう…

首を横に傾げながら、自分のデスクへと腰をかける。

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宮「あっ、今日会議だっけ？」

阿「うん。社長が資料まとめてって言ってたっけ。多分この後に」

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意味が分からない。

やっぱり昨日見たのは阿部さんではなく、私の勘違いだったのかなぁ…

いや、でも！

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阿部さんを見つめていると、『んっ？』って可愛く首を傾げて来る。

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ちょっとこのこと一旦、考えるのはやめよう。

ただ一つだけ言うとしたら…

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今日彼と二人きりになるのだけはキツいってこと、だ。

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